中国の独立系外交政策シンクタンク・察哈尔協会の高級研究員・呉非が香港のラジオ・フリーアジアの取材にこうコメントしていた。

 「中国と朝鮮の関係において、実際のところ、核兵器問題については一切の共通認識がないのだ。金正日時代に中国から大量の援助を受けて、また金正恩もこの援助を受けているが、それでもはばかることなく核実験を行い、長距離弾道ミサイル実験も行っている。しかも我々はいまだこれを“人工衛星”と言っている。彼らがこうした実験を一層集中して行うのは、彼らの政権が危機に瀕しているということでもある。相当焦っているのでなければ、中国の除夜に長距離弾道ミサイル実験など行うわけがない。もし中国がこれによって援助をやめ、さらに国際社会も強烈な圧力を持ち続けていれば、金正恩はすぐさま訪中団を差し向けて泣きついてくるに違いない」

 山東大学元教授の孫文広もやはりラジオ・フリーアジアに対し、「中国は朝鮮のミサイル発射に反対はしているが、同時に朝鮮の行動が中国の国際的地位や影響力を体現するものであることを望んでいる」とコメント。「朝鮮が飛び跳ねれば飛び跳ねるほど、中国の影響力は突出してくる。中米関係においては、中国にとって朝鮮は重要なカードであり、目下、朝鮮に対して制裁を行うつもりもないのである」

北を隠れ蓑に「南シナ海」着々、本命は軍制改革

 彼らの意見は、中国にはまだ北朝鮮に“好き勝手させる”余裕があり、むしろ、いまの北朝鮮の余裕のなさなど内実をわかっているだけに焦りがなく、むしろ対米外交的に利用できると踏んでいる、というものである。実際、北朝鮮が年末から米国を思いっきり挑発してくれる前は、米中の南シナ海をめぐる対立が先鋭化していたのである。北朝鮮が米国の批判の矛先を代わって受けてくれる間に、中国は着々と南シナ海の人工島の滑走路で離着陸試験を行っていた。

 一方、現段階では北朝鮮問題を顧みる余裕がないのはむしろ中国ではないか、という見方もある。既報されているように、習近平政権は現在、軍制改革の真っ最中である。この改革案のキモは七大軍区制を五大戦区(戦略区)に編成し直すという劇的なもので、2月1日に五大戦区の設立が宣言されたものの、正直うまくいくかどうかはまだ見極めがついていない。

 この軍制改革の目的は、一つは時代遅れの軍区制を米国のような戦略区制に改編することで軍の近現代化を大幅に進めるというものだが、もう一つの目的は、いわずもがな、習近平が政敵として失脚させた徐才厚一派の巣窟である瀋陽軍区の解体でもある。瀋陽軍区をそのままにしていては、いつクーデターがあるかと習近平もおちおち枕を高くして寝られない。実際クーデター未遂らしき事件も起きていると伝えられ、また北朝鮮の核実験、ミサイル実験に使われている部品も瀋陽軍区から横流しされているとの噂も絶えない。遠い北京への忠誠よりも、近くの北朝鮮との利権関係を重視してきたのが瀋陽軍区であった、とも指摘されている。

 そこで習近平の軍制改革では瀋陽軍区と北京軍区を一つにし、従来の徐才厚派将校や北朝鮮利権を持つ将校を一掃し、自分の肝いりの部下を配置し、北部戦区として、対北朝鮮、ロシア、日本の一部からの攻撃に備えたい考えなのだ。