だが、北朝鮮のやり方を見れば、その挑発の一番の矛先はむしろ米国ではなく、中国であるとも見てとれる。昨年10月に中国共産党序列5位の劉雲山が訪朝した結果を受けて、12月12日に北京で初の海外公演をする予定だった金正恩の美女楽団「モランボン楽団」がドタキャンし、いきなり平壌に帰国したことは、中国のメンツを大いに潰した。

本気を出せば、ひとたまりもないはずだが…

 この公演は2000人の中国高官らが招待され、2013年12月に親中派で当時ナンバー2とされていた張成沢が残酷な方法で粛正されたのち、冷え込んでいた中朝関係の回復を印象づけるはずの重要な政治イベントになるはずだった。だが、モランボン楽団訪中初日に、北朝鮮の水爆保有が報道され、楽団の公演演目に人工衛星やロケットを讃える歌や、ミサイル発射実験ムービーを映し出す演出が含まれていることがリハーサルで明らかになると、中国指導部も黙っておれなくなり、公演参加の高官のランクを下げると、これに反発した金正恩はモランボン楽団の即刻帰国を命じたのだった。

 そして、そのあと、年明けて1月9日、中国をあざ笑うかのように“水爆”実験を行い、中国は「事前に知らされていなかった」と発表。だが中国が激怒して重油供給など対北朝鮮援助を止めるかと思えば、どうも歯切れが悪く、国連の対北朝鮮制裁決議案には難色を示し、1カ月たっても制裁に踏み切れない始末。

 しかも、北朝鮮の対話を通じての問題解決を主張する中国が2月2日から4日にかけて平壌に派遣した朝鮮半島問題特別代表(六か国協議議長)武大偉が帰国するやいなや、金正恩政権はミサイル発射予告を発表。国連の制裁決議案に抵抗し、北朝鮮側と落としどころを探る努力をアピールしていた中国側の立場を完全に無視した。そして、中国人・中華圏が春節大晦日(除夕)という平安を祈る日にミサイル発射実験を行ったのだ。

 普通なら、中国は怒り心頭に発してもよいはずだ。だが、この期に及んで、中国側報道官の発言は慎重きわまりない。

 中国は2003年2月、北朝鮮に通じる重油パイプラインを閉じるなどして、北朝鮮に揺さぶりをかけた過去がある。この時、北朝鮮は猛烈に抗議するも、結局六か国協議のテーブルに着くことになった。中国が本気を出せば、やはり北朝鮮はひとたまりもないはずなのだ。

 この背景については、海外だけでなく、中国国内の学者や知識人たちの間でも「なぜ?」の声が上がり、それぞれに分析している。