(写真:ロイター/アフロ)
(写真:ロイター/アフロ)

 アパホテルの客室内に、アパホテルグループの元谷外志雄代表の書いた歴史本が常備されていて、しかもその内容が「南京大虐殺や慰安婦問題はねつ造」といったものが含まれていたことが、中国さまの怒りをたいそう買って、“官製”不買運動に発展したことは、すでにいろんなメディアが報じている。

 先週日曜には、ついに在日中国人らによる抗議デモが新宿で行われて、それに対して在特会元会長らがカウンターデモを行ったという。ライブでのネット放送や、知人が現場で取材した様子を見るに、口汚い言葉を発するのはカウンターデモ側で、むしろ中国人サイドは「日中友好」や「JAPAN好き」みたいな垂れ幕を掲げて行進するサイレントデモだった。当初300人などと言われていたデモ参加者も100人以下、正味の中国人参加は数十人レベルで、むしろカウンターデモが騒ぎを起こさねば、ほとんどニュースバリューもない話だった。

 結果的には、中国やアンチアパホテル側にとっていい感じの映像や記事が山のように出来上がった。ちなみに、私は現場にはいかなかった。目の前の片付けなければいけない仕事が山積みであったのと、実際あんまり興味がわかなかったことも、目と鼻の先の現場にいかない怠け者のいいわけである。

 だが、はっきり言って、これはニュースとして取り上げれば取り上げるほど、中国にとって有利な情報拡散になるプロパガンダという気がして、かかわりたくないのだ。もちろん、そう言い切ってしまうほどの確たる裏はとれない。そういう場合は、報道しない自由を行使する。だが、ちょっと目に余る現象がいろいろと起きているので、現状を整理してみることにする。

実質主義の人たち

 そもそもアパホテルの経営者の歴史認識がどういうものであるかなど、例の田母神論文問題である程度新聞を読んでいる日本人ならば知っているし、在日中国人でも日本語のニュースを日々読んだり聞いたりしている人ならば、おおむね察しのつく話だ。

 それでも多くの中国人がこれまでアパホテルに泊まっていたということは、普通の民間人にとってホテル経営者の歴史認識、思想・信条などは気にするほどのものではなくて、ホテルとしてよいサービスやリーズナブルな価格の方を重視するのだ。反日活動家だってカメラはパナソニックを愛用しているし、播磨屋のおかきやDHCのサプリや化粧品を土産にもっていっても、普通の中国人はその会社の思想信条などに関心はなくて、日本の安全、安心、おいしい商品に夢中になる。そこらへんは実質主義の人たちである。

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