矢継ぎ早の大統領令で世界を右往左往させるトランプ新大統領。中国には吉か凶か(写真:代表撮影/UPI/アフロ)

 日本の場合、選挙時の公約というのは、たいてい守られないものなのだが、米トランプ政権は、ものすごい勢いで公約を履行している。政権スタートから、わずか20日で、14本もの大統領令に署名。「まさか本当にやるとは思っていなかった」と思われていた、メキシコ国境の壁建設はじめ、TPP離脱、中絶支援のNGOへの資金供給停止などを指示する大統領令が次々と出された。中東・北アフリカ7カ国出身者の入国を一時停止する大統領令では、各空港で大混乱を引き起こし、世界中が右往左往している。

 この様子を慎重に見守っているのが中国だ。トランプ流の矛先のいくつかが中国に向かってくるのは必至。その一方で、米国の世論が分裂し、米国が世界のリベラル派から批判されるようなこの状況は、中国にとってチャンスという見方もある。トランプのこの“異次元の手法”が中国にとって凶と出るのか、吉と出るのか、ちょっと状況を整理しておこう。

在米華人はトランプを支持したが…

 まず普通の中国人たちは、このトランプ流に、どのような影響を受けるのだろうか。環球時報が、専門家にインタビューしていたので概要を引用してみる。

 まず、ここ数年の間に急増していた中国からの合法移民が一定の影響を受けるとされている。H1-Bビザを受けた中国人のほか、グリーンカード所有者で米国への納税記録がない人間がグリーンカードを取り消される懸念が持ち上がっている。

 また、オバマ政権時代に、米中間の旅行者は10年マルチビザ制度が実施され、中国人観光客や留学生が急増し、在米華人の数も増加していた。中には米国で不法就労している者もあった。こうした不法就労者に対する取り締まりは強化され、ビザ発行審査がさらに厳格になり、留学生や観光客の米国滞在期限も厳格化されるのではないかと見られている。

 トランプの性格上、在米華人に対する政策が厳しくなり、華人社会に対する差別が引き起こされる可能性もある。特に、米国籍取得目的で米国に行って子供を出産した“出産ツアー”によって、国籍を得た中国人の子供は、法的にはグレーゾーンに入り、すでに米国の社会問題になっている。一部華人は、こうして取得した米国籍の子供の世話を理由に、自分の家を売り払って米国に資産移転して移住し、米国政府からの社会保障手当を得て生活している人たちもいるが、こうした人たちが追い返される政策転換が起きるかもしれない。

 さらに、投資移民にとっても、投資額が引き上げられる可能性がある。米国の移民に対する政策は目下、支離滅裂になってきており、中国人とてその混乱に巻き込まれることは避けられない。在米華人社会は、選挙のときはおおむねトランプを応援してきたわけだが、結果としては、華人社会にとってあまりありがたくない現象が引き起こされつつあるわけだ。