2014年になって馬英九政権に対する失望、反感が若者を中心にますます広がっていった。3月18日から24日間にわたって立法院を学生たちが占拠したひまわり学運が、台湾政治の潮目を決定的に変えた。このひまわり学運が求める台湾の方向性とは、中台急速接近の阻止、国会の機能回復、そして何より「台湾アイデンティティ」の再度の盛り上がりだろう。

「ツゥイ公開謝罪」と台湾アイデンティティ

 この頃から党内でも、「一辺一国論」起草者の蔡英文しかいない、という待望論が盛り上がってきた。5月の民進党主席選挙で93%以上の圧倒的な得票率で蔡英文は党主席に返り咲き、総統候補となった。

 台湾アイデンティティとは「私は台湾人であって中国人ではない」という意識であり、台湾の核心的価値は民主である、という意識である。

 投票日に明らかになった、ツゥイの公開謝罪問題は、まさしくこの台湾人アイデンティティ問題にからむ。ツゥイは韓国美少女アイドルグループTWICEのメンバーだが、韓国のテレビ番組で、彼女が台湾出身をアピールするため中華民国旗(青天白日旗)を持ったシーンが、大陸のファンからものすごい反発を買った。大陸ネットユーザーを中心にTWICE不買運動、中国テレビ出演反対が呼びかけられ、所属事務所の株が急落、65億ウォン相当が蒸発した、と報道された。そして事務所の判断か、中国当局の圧力かは分からないが、選挙投票日当日、この騒動の責任をとる形でツゥイの公開謝罪ビデオが流された。

 ビデオでツゥイは憔悴した表情で「中国はただ1つだけです。(台湾)海峡の両岸は一体です。わたしは終始、自分が中国人であることに誇りを感じています。1人の中国人として外国で活動しているとき、行いの間違いによって、両岸のネットユーザーの感情を傷つけました。とってもとっても申し訳ないと感じています。そして恥じ、やましさを感じています。私は中国での一切の活動を休止することを決めました。真剣に反省しています。もう一度、もう一度みなさんに謝ります。ごめんなさい」と頭を下げたのだった。

 このビデオは投票日当日、何度も台湾のテレビで流され続け、投票者に「中国の脅威」と「台湾アイデンティティ」を再認識させた。そして「青天白日旗」は国民党徽章の入った中華民国旗であるが、なぜか票は緑の民進党に流れた。それは馬英九国民党政権があまりに親中的だったからだ。