11月6日に一部海外メディアで銅鑼湾書店関係者4人の失踪が報じられてのち、やはり林栄基本人からそのメディアに対して「私は無事だ。しばらくしたら帰るから、心配しないでほしい」という電話がかかってきたという。同じ頃、ドイツの桂民海の妻に桂民海から同じ内容の電話がかかって来た。

 一方、銅鑼湾書店の書店員の張志平は妻が東莞に暮らす中国人で、ちょうど東莞の妻の家にいるとき、十数人の男が突然現れて連行したという。その後、本人から家族に電話があり「大丈夫だ」と連絡があった。呂波は銅鑼湾書店の株主の一人だが、やはり妻が深圳住まいの中国人で、妻の家にいるところを連行されたという。この連行状況から考えても、林栄基も桂民海も中国当局に身柄を押さえられ、いま中国国内にいることはほぼ間違いないと思われている。

英国籍の李波を香港内から“内地”へ

 最後に失踪した李波は11月の段階で、林栄基ら関係者4人の失踪にずいぶん怯えていた。だが、彼も12月30日を境にふっつりと消息を絶った。31日に銅鑼湾書店の株主でもある妻が、香港警察に失踪届を出したが、年明けに李波直筆のファクスが会社に届き、「急いで処理せねばならない問題があり、世間に知られないように内地に戻って、調査に協力している。しばらく時間がかかる。…失踪捜査届を取り下げるように妻に伝えてほしい」という伝言があった。

 李波は英国籍保持者だ。大陸に行くためのビザ替わりでもある「回郷証」は自宅に置いたままの失踪だった。となると、彼はどうやって大陸に入境できたのか。本人の同意あるなしにかかわらず、香港という一国二制度の建前がある地域で、堂々と外国人を中国の都合で大陸に移送したとしたら、これは中国がいまや北朝鮮並みの無法国家になりさがったということではないか。

 2013年から香港の出版界弾圧は始まっていたが、それでも、出版関係者が深圳に入ったタイミングで逮捕するという最低限のルールは守られていた。タイのような外国で、外国籍華人を拉致するのもひどい話だが、香港という一国二制度による自治を中国自身が約束している地域で、香港の司法を完全無視して外国籍を持つ人間が拉致、連行されてしまうなど、許されていいわけがない。

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