
台湾総統の蔡英文が中米訪問の経由地・米ヒューストンでテキサス州知事のグレッグ・アボットや米上院議員のテッド・クルーズと面談した。クルーズは中国側から蔡英文に面会しないように要請する書簡を受け取ったことを明らかにし、「誰と会おうか決めるのは私たちだ」「この件に中国は関係ない」と不快感をあらわにしたとか。
とにかく中国が今、トランプ政権に関して最も神経をとがらせているのは、台湾問題であろう。トランプが正式に大統領就任前とはいえ、「一つの中国になぜ縛られなければならないのか」と、米中関係の前提となっている「一つの中国」原則を、対中交渉カードに持ち出したことは、中国にとっては共産党体制の存続にすら影響を与えかねないからだ。
トランプ政権がどこまで本気で言っているのか測りかねている中国では、とりあえず台湾武力統一論を盛り上げ、台湾と米国に揺さぶりをかけてきている。折しも、台湾では今年が2・28事件という国民党の白色テロ事件から70周年を迎え、台湾の民主と自由を勝ち取るまでの長い道のりを振り返る節目の年でもある。今年の中台関係の行方を少し考えてみたい。
揺らぐ国際的フィクション
国共内戦の末、勝利した中国共産党が今の広大な中国の土地を支配し中華人民共和国を建国したわけだが、台湾に敗走した中華民国国民党政府も大陸反攻を今に至るまで建前上は放棄したわけではない。中台統一というのは、孫文をともに国父と掲げる国民党・共産党の悲願だ。
実際には台湾にすでに国民党政府は存在せず、選挙で選ばれた台湾土着の民進党政権が台湾を統治している。そもそも新疆、チベット、モンゴルまで自国の領土だとする中華民国の主張がフィクションであることは、1971年の国連脱退と、その後の台湾の民主化の道程の中で誰の目にも明らかになっていた。
だが「一つの中国」であったものが分裂したのが、中華民国と中華人民共和国であり、もともと一つだったものが元に戻るのが一番望ましいという考えを国民党、共産党とも持ち続けてきた。そして、国際社会もすでにフィクション、虚構とわかっていながら、その前提を受け入れてきた。
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