最終兵器は宇宙兵器に?
こうした状況を鑑みれば、米国は中国製造2025戦略を本気でつぶす方針を一層固めたことだろう。中国製造2025戦略の中心は半導体国産を主とする通信覇権と、国産宇宙技術によって宇宙の覇権を米国から奪うという狙いのもとに練られたものだ。とすれば、中国がなりふり構わずにカナダ人を大量拘束し、なんとか保釈させた華為技術のナンバー2の身柄は、米国も簡単にあきらめないだろう。彼女の身柄が米国に渡れば、華為の息の音は完全に止められよう。現在停戦中の米中貿易戦争も3月に再燃することになろう。
貿易戦争はやがて通貨戦争に発展し、米中経済のみならず世界経済を金融危機に巻き込むかもしれない。中国の昨年のGDP成長率が実のところ内部向けリポートで1.67%しかなく、実質マイナス成長という試算もあることが、体制内部学者から指摘されているように、中国経済の追いつめられ方は改革開放以来、最悪だ。今年も為替、住宅相場、外貨準備の不安定化が増すとみられ、一部アナリストの中には1929年の大恐慌規模のショックが中国発で起きうる、という見方も出ているくらい危うい。人類が歴史に学ばない動物であるとすれば、米中冷戦構造が世界を巻き込む熱戦に転じることなどたやすいことだ。もし次に熱い大戦がおきるとすれば、トランプ政権は宇宙軍創設を指示しており、ロシア、中国ともにすでに衛星兵器をもっているといわれているのだから、最終兵器は核兵器ではなく宇宙兵器かもしれない。
2019年1月、見たこともない月の裏側を見ることができたのは純粋に興奮したが、ふと冷静になれば、なんと不吉な幕開けだろう。月はめでるもの、己の手に入れようと思ってはいけない。
今回で連載は最終回です。長らくのご愛読をありがとうございました。

2017年10月に行われた中国共産党大会。政治局常務委員の7人“チャイナセブン”が発表されたが、新指導部入りが噂された陳敏爾、胡春華の名前はなかった。期待の若手ホープたちはなぜ漏れたのか。また、反腐敗キャンペーンで習近平の右腕として辣腕をふるった王岐山が外れたのはなぜか。ますます独裁の色を強める習近平の、日本と世界にとって危険な野望を明らかにする。
さくら舎 2018年1月18日刊
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