12月16日、ソフトバンクグループが、欧州衛星通信ベンチャーのワンウェブへの1000億円以上の出資を検討しているというニュースが流れた。

 ワンウェブは、700機以上の周回衛星を打ち上げて全世界どこからでもネットへの接続を可能にしようと動いている企業だ。12月19日には、ワンウェブ社が、ソフトバンクグループから、12億ドル(1ドル117円換算で1404億円)の出資を受けると発表した。

 21世紀初頭にはADSL回線の価格破壊をかなり強引な形で展開して、日本におけるブロードバンド接続の普及を加速したソフトバンクの孫正義氏ならば、ワンウェブの事業に着目するのはごく自然なことだろう。

 多数の衛星から構成する衛星システムのことを、「衛星コンステレーション」という(constellationには「星座」という意味がある)。

 数十から数千機の通信衛星を打ち上げて、全世界のどこからでも通信を可能にする構想は、1990年代から存在した。が、当時はまだ「ネットで儲けるにはどうしたら良いか」を試行錯誤しており、投資を回収できる状況ではなかったために、立ち上がった構想が実現する状況ではなかった。現在ではネット通販やネット決済などが普及し、「ネットが存在することで可能になる経済活動」が質も量も1990年代と比べると格段に増えている。通信衛星コンステレーションの構築を目指しているのもワンウェブだけではなく、米ベンチャーのスペースXや、米ボーイングも、それぞれ構想を発表し、具体化に向けて動いている。

 2016年、ネットを利用可能な世界のインターネット人口は、34億9000万人になると予想されている。これは世界人口74億人の半数弱だ。通信衛星コンステレーションが稼働すれば、残る世界人口の半分がネット経由で世界経済に参加することになる。多くは発展途上国の人であり、その経済力は大きくはない。しかし、インターネット人口が一気に2倍になり、究極のグローバリゼーションを実現する可能性、そして実現した場合の影響を過小評価すべきではない。

ルワンダでのネット事業者の経験から衛星に着目

 現在の通信衛星コンステレーションを巡る動きの震源地となったのは、ワンウェブの創業者であるグレッグ・ワイラーという人物だ。彼は技術系のシリアル・アントレプレナーで、2002年にアフリカ・ルワンダでインターネット接続会社を起業し、発展途上国に通信ケーブルなどネット接続インフラを構築する困難さを身をもって経験した。その結果、ワイラーは「全世界の発展途上国に通信衛星経由でネット接続を提供する」という構想を持つようになった。

 2007年、彼は通信衛星コンステレーションにより発展途上国にネット接続提供する会社O3bネットワークスを設立した。O3bとはOther 3 billionのこと。つまりネット接続を享受していない主に発展途上国の30億人(2007年当時の数字)を意味する。

 O3bは、発展途上国の政府や通信会社、プロバイダーと契約し衛星経由の基幹ネット回線を卸すというビジネスモデルを選択した。使用する通信インフラは赤道上空8000kmの円軌道に重量700kgの衛星12機を配備する通信衛星コンステレーションだ。2013年、O3bはグーグルから10億ドルの出資を受け、グーグル傘下に入った。O3bは2013年と14年に12機の衛星を打ち上げてサービスを開始した。