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室屋:福島の海沿い――浜通り地方に3~4kmの長大な滑走路を中心にした航空の集積地ができればいいなと思っています。宇宙帰還機が利用できる十分に長い滑走路を中心に、航空機の整備施設や航空機開発メーカーの工場、ベンチャー企業などが集中して立地する拠点です。

どんな機体でも作ったらすぐに飛ばすことができる場所ですね。米国だとモハビ砂漠みたいなところ。

浜通り地方は非常に可能性に恵まれた場所

室屋:そうです。東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故で大きな痛手を被った浜通り地方ですが、航空という面から見ると非常に大きな可能性を持っているんです。

 まず、巨大な施設を建設できるだけの十分な広さがあります。平坦な地形で、高さ数十mの丘陵が連続する程度なので飛行場には適しているんです。空域管理という面でも、海岸から少し沖合に出れば自由に飛べる空域がある。つまりエクスペリメンタルの区分に入る実験機を飛ばすという点では、はるか沖合の空域まで飛んでいかねば飛行試験ができない既存の小牧や岐阜より有利になります。

 モハビ砂漠は、米国南西部カリフォルニア州、ユタ州、ネバダ州、アリゾナ州の4つの州にまたがってひろがる広大な砂漠だ。ここには米空軍が技術開発の拠点として、巨大なエドワーズ空軍基地を構えている。エドワーズでは、1947年10月のチャック・イェーガーが操縦するベルX-1実験機による史上初の音速突破や、1981年のスペースシャトル「コロンビア」初飛行時のコロンビア着陸など、航空宇宙の歴史に刻まれる数々の事業が行われた。

 エドワーズ空軍基地の北西には、民間機向けのモハビ空港がある。最長3800mの長大な滑走路3本を持つ一方で、定期航空は就航していない。このため、モハビ空港には航空宇宙系のベンチャーが集まり、「実験機を作ったらすぐに飛ばすことができる、民間の技術開発の拠点」として活況を呈している。有名どころでは、航空機設計者バート・ルータンが起業したスケールド・コンポジット社が、このモハビ空港のハンガー(格納庫)に本社を置いている。

 小牧というのは、愛知県・豊山町の名古屋飛行場のこと。1942年の開設当初は小牧陸軍飛行場という名称だったため、今も通称「小牧」と呼ばれている。中部国際空港(セントレア)が2005年に完成するまでは愛知県の空の玄関だった。ここには国産旅客機「MRJ」を開発する三菱航空機が本社を置いている。MRJは2015年11月に、この小牧で初飛行を行った。

 岐阜は、岐阜県各務原市にある航空自衛隊・岐阜基地のこと。ここには自衛隊向けの技術開発と飛行試験を行う飛行開発実験団が配置されている。隣接して川崎重工業の岐阜工場があり、最近では同工場で開発・製造した空自向け輸送機「C-2」、海自向け哨戒機「P-1」が、岐阜基地でロールアウトと初飛行を行っている。

室屋:もちろん地域の方々の思いがとても重要で、福島県民の合意形成が必要なのはあたりまえなので、これはあくまで航空運航者としての個人的妄想です(笑)。でも、福島の浜通りには航空機の飛行訓練、運用や整備から実験機や新機種の開発に至るまでのすべてが集まる集積地になるだけの条件がそろっているんです。

 おそらく実現には30年とか40年とか長い時間がかかるでしょう。子供教室に来てくれる子供たちの中から育った人材が、日本の航空を主導するようになるまでの時間です。多分もう自分は生きちゃいないですね。

 それでも、国が本気で航空を振興したいと考えるならば、これぐらいの長期計画で十分な容量を持つ拠点を整備することは、国家として未来への価値ある投資だと思っています。