初打ち上げ時期について、ベゾスCEOは、“end of this decade”という言葉を使った。ブルー・オリジンは、2015年9月にフロリダ州ケープ・カナヴェラルにロケット製造拠点を持つ計画を発表、同時にケープ・カナヴェラル空軍ステーション内にあり、かつては「アトラス」ロケットを打ち上げるのに使用されていたLC36射点から新ロケットを「2020年までに」打ち上げることを明らかにした。この新ロケットこそがニュー・グレンというわけだ。いくらかの遅れを見込んだとしても、2020年代の早い時期には、ニュー・グレンの打ち上げが始まることになる。

打ち上げ能力は「アリアン5/6」級か

 比較図を見ると、ニュー・グレンはサターンVに匹敵する巨大ロケットに思える。実際、発表に対するメディアの反応も「あのベゾスが、有人月ロケット並みの大型ロケット開発を表明」という論調が目立った。

 が、サターンVの直径は10.1mで、ニュー・グレンの直径は7mなので、断面積を比較すると、ほぼ2対1だ。ロケットの胴体は円筒形をしているので、この差は、搭載する推進剤の量の差となる。推進剤の量は打ち上げ能力に直結する。つまり、実のところニュー・グレンは、サターンVのほぼ半分の規模、スペースXが2017年初頭に初打ち上げを予定している「ファルコン・ヘビー」と同クラスのロケットと、私は見る。ファルコン・ヘビーは、地球低軌道に54.4tのペイロードを打ち上げることになっている。

 エンジンの性能や機体の仕様など未公開の情報が多いので、おおよその推定となるが、ニュー・グレンは2段式が、地球低軌道に30~40t級、3段式が同じく40~50t級の打ち上げ能力を持つのではないだろうか。

 しかもこの数字は、第1段を回収せずに使い捨てにした場合だ。ニュー・グレンは第1段を回収・再利用するとしており、その場合の打ち上げ能力は下がる。ニュー・グレンの第1段は大きいので、「ファルコン9」ロケットの第1段のように洋上回収船に降ろすことは難しいだろう。第1段を射点近くに戻すとなると、洋上回収よりもさらに打ち上げ能力は下がる。

 おそらく、第1段を回収する場合の打ち上げ能力は、2段式が現在欧州が運用している「アリアン5」と同等程度の、地球低軌道20t級、3段式が「デルタ4ヘビー」よりやや大きい同30t級程度であろう。つまりニュー・グレンは米官需衛星から商用静止衛星までの既存の衛星をすべて打ち上げることが可能で、しかも将来的に余裕のある打ち上げ能力とフェアリング容積(=衛星の積み込みスペース)を市場に提供するロケットということになる。

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