ファルコン9は、打ち上げにあたって毎回SFTを実施している。その理由をスペースXは「信頼性向上のため打ち上げ前に入念な点検を行う」とだけ公表しているが、おそらく第1段エンジンが1基のH-IIAに対して、ファルコン9は9基を装備しているからだろう。そのすべてを本体に組み付けた状態で、相互に干渉することなく正常に動作することを事前に確認する意味があると思われる。

 また、ファルコン9は、2010年の初打ち上げ以降、「ファルコン9 v1.0」(1号機~5号機の合計5機)、「同 v1.1」(6号機~19号機、21号機の合計15機)、「同 v1.1フルスラスト(v1.1FT)」(20号機、22号機~29号機のこれまでのところ9機)と、2回の大改良を受けている。商業打ち上げに使うロケットの設計を次々と変更するというのは、スペースXが宇宙業界に持ち込んだITベンチャー的手法のひとつだ。

 特に現行のv1.1FTは、1)第1段への着陸脚搭載標準化による標準的打ち上げシーケンスへの第1段回収の取り込み、2)第1段エンジン「マーリン1D」の推力増強、3)燃料のケロシンを冷却して高密度化した上でロケットに充填するという新技術の適用――と大きく第1段を変更してきている。新技術を次々適用することから生じる信頼性低下を防ぐために、同社はSFTを実施してきたのだろう。

 が、ここでもうひとつの疑念が生じる。SFTを実施するだけなら、なにも衛星をロケットに搭載する必要はないではないか。

 ロケットだけでSFTを実施し、その後で衛星を搭載して打ち上げるようにしておけば、今回の事故のようにロケットもろともカスタマーの衛星まで喪失せずに済んだはずなのだ。なぜ衛星を積んだ状態でSFTを実施したのか――答えはファルコン9の組立手順とバックオーダーにある。

過大なバックオーダーと遅れる打ち上げスケジュール

 9月4日時点で、スペースXの打ち上げ予定には、ファルコン9と、現在開発中の大型ロケット「ファルコン・ヘビー」と合わせて41機が掲載されている。打ち上げ契約には打ち上げ時期も含まれており、同社はこのすべてを数年のうちに打ち上げねばならない。急速なロケットの改良と、高頻度の安定した打ち上げの両立は容易なことではなく、スペースXの打ち上げは、予定からの遅れが常態化している。2014年は11機のファルコン9を打ち上げる予定が実績は6機、2015年は12機の予定が実績は8機だった。

 ということは、衛星を搭載した状態でのSFTは、打ち上げ間隔を短縮するための苦肉の策、と推察できる。

 ファルコン9は、ロケットの組立から衛星を搭載したフェアリング部の装着までをすべて横倒しの状態で行い、横のままロケットを射点まで運んで、最後に立てるという打ち上げ準備の方法を採用している。この方式で、衛星を搭載しない状態でのSFTを実施するには、まず衛星なしのロケット本体射点に立ててSFTを実施し、またロケットを横に戻して組立施設に戻し、衛星を搭載してから再度射点に運んで立てる必要がある。それに対して、衛星を搭載した状態でのSFTなら、完全に組み上がったファルコン9を射点に立て、SFTを実施後、問題がなければそのまま打ち上げを行うことができる。

ファルコン9は、横置き状態で完全に組み上げて、射点まで輸送した後に直立させる(画像: SpaceX