この時ファルコン9は、完全な打ち上げ時の機体構成になっており、先端の衛星フェアリング内部には打ち上げ時重量5.5tの大型通信衛星「AMOS-6」が搭載されていた。衛星もまた、この爆発で失われた。

 AMOS-6はイスラエルの通信事業者スペースコム社の衛星で、イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ(IAI)が製造した。世界最大手SNSのフェイスブックのマーク・ザッカーバーグが設立した非営利団体Internet.orgが同衛星の提供する通信サービスのユーザーとなり、サハラ砂漠以南のアフリカにネット接続環境を提供する予定だった。

 なお、この事故による死傷者はなかった。

 スペースXは事故直後からホームページで事故関連の情報開示を開始した。これまでのところ、事故はロケットへの推進剤充填中に起きたことと、爆発が第2段液体酸素タンク付近から始まったことが分かっている。

 現在、米航空宇宙局(NASA)と米空軍が協力して、事故原因の究明と、射点設備の損傷の度合の調査が進行中で、公式の調査結果は公表されていない。

 ただし、2つ言えることがある。

 まず、2010年の初打ち上げ以降ファルコン9は急速なアップグレードを重ねていた。そのことが射点でのSFT実施に関係しているらしい。

 もう一つはスペースXが、過大なほどのバックオーダーを抱えて、打ち上げを急いでいたということだ。

大改良による信頼性低下を打ち上げ前試験でおぎなう

 打ち上げ前の動作確認試験は、「消火器の動作確認」と似ている。

 消火器は「使えるかな」と、試しに噴射してしまうと、実際の火事の時には使えなくなってしまう。ロケットに液体酸素のような低温の推進剤を充填すれば、「漏れはないか、配管は健全か」は確認できるが、同時に低温で配管が収縮してストレスがかかり、思わぬ故障の原因となる可能性が出てくる。噴射試験を行えば、エンジンが正常に動作するかは確認できるが、発生する振動で別のところにトラブルが出る可能性もある。試しに動かすことは、同時に、新たなトラブルの種を作ることでもある。

 だから通常は、打ち上げ回数を重ねて安定した運用が可能になると、打ち上げ前の動作試験は必要最小限に留めるようになる。

 射点上に立てたロケットに推進剤を充填する試験のことを「ウェット・ドレス・リハーサル(WDR)」という。第1段エンジンを点火して噴射試験は前述した通り「スタティック・ファイアリング・テスト(SFT)」だ。例えば日本のH-IIAロケットは、エンジン噴射試験は単体で、三菱重工業・田代試験場(秋田県)で行った後に機体に組み付けている。組み付け後のSFTは行わない。2001年の初号機打ち上げ後、しばらくは種子島宇宙センターでWDRを行っていたが、現在はWDRも省略している。