即応体制の完成度は高そうだ

 安倍晋三内閣総理大臣は29日午前の記者会見で「ミサイル発射直後からミサイルの動きを完全に把握」と述べた。日本は赤外線でミサイル発射を検知する早期警戒衛星を持っていないので、おそらく米国の早期警戒衛星網からの情報提供を受けたのだろう。その情報に基づいて、地上からのレーダー監視を行い、ミサイルの飛行を追跡したものと思われる。

 これは、日本が米国と協力して北朝鮮のミサイル発射を監視する体制を確立していることを意味する。今回、午前6時3分にミサイル発射を知らせるJアラートが出た。発射後5分程度でアラートが出たわけで、情報提供体制がきちんと動作したことは、評価に値する。ただし、もしもノドンが日本を狙ってきた場合には着弾まで数分しかない。その時間で何を行ってどのように被害を軽減するかは、今後の課題ということになる。

次のカードは核実験か

 北朝鮮は一貫して、ぎりぎりまで緊張感を引き上げることで米国を二国間交渉の場に引きずり出すことを狙っている。金正恩体制になってからの北朝鮮は、ミサイル開発を積極的に進めており、同国のミサイル技術は急速に進歩している。ミサイル発射は緊張感を高めるための外交の道具として使われており、そのエスカレーション戦略をミサイル技術の進歩が支えている。技術が進むことで、使える手札が増えるという循環だ。

 次のステップは、「北朝鮮が次の核実験を実施するか。実施するとしたらいつか」だろう。間違いなく北朝鮮は機会をうかがっており、米国が実力行使しないと確信すれば核実験を実施するだろう。

 北朝鮮の核兵器については、すでに開発に成功しているという見方もある。しかし2006年から2016年にかけての5回の核実験の経緯と結果を見ると、同国の核兵器技術は未だ完成とは言えないようだ。技術の完成にはさらなる実験が必須であろう。

 ミサイルはそれ単体では必殺の武器にならない。核兵器が組み合わさることではじめて世界を脅す兵器となり、外交的な道具として機能する。北朝鮮の戦略は、核兵器とミサイルが両方揃うことで、初めて現実的な意味を持つ。米国もそのことを理解しているので、核実験実施時の実力行使を示唆して、北朝鮮を牽制している。

 北朝鮮にとっても米国にとっても、世界にとっても、これは膠着状況の中での悪夢のチキンレースだ。米国が実力行使に及べばおそらく北朝鮮という国は消滅するが、その過程で日本を含む東アジア地域に大きな被害が生じることになる。他方で、米国は絶対に北朝鮮が望むような二国間交渉に応じるわけにはいかない。応じてしまえば「核兵器の開発で、米国と対等に交渉ができる」という実例を作ることになり、将来的に米国の外交にとって大きな禍根となる。

 しかしながら現在のトランプ米大統領も金正恩第一書記も、どのような決断をするかいまひとつ読めないところがある。悪夢のチキンレースの真ん中には、「どのような決断をするか分からない2人」という人的要素が居座っているわけで、相手の手札とその意味を正しく読み取り、合理的に行動してくれるよう祈るばかりだ。