水平飛行距離400kmは、ムスダンの射程から見ると8分の1~10分の1程度だが、到達高度が高かったことからすると、遠くに飛ばないようにわざと高く打ち上げたとみて間違いない。

6月22日の発射時の映像。全長は母体となったR-27よりも約2m長く、搭載推進剤の量を増やして射程を伸ばしている。噴射炎が3本見えるが、中央が主エンジンの、両脇の小さな噴射炎は姿勢制御用小型エンジンのもの。この形式はR-27の4D10エンジンと同一である。(画像:朝鮮中央通信映像からキャプチャー)

弾道ミサイルに必要な3つの技術

 弾道ミサイルの開発には最低でも、1)確実に動作するロケットエンジンの技術、2)正しく目標に向けて飛行を行うための誘導制御技術、3)大気圏外から目標へと突入する際に弾頭を保護するための熱防護技術――の3つの技術が必要だ。

 これまでに北朝鮮は、「銀河3号/光明星」の打ち上げで、エンジン技術と、誘導制御技術を手にしたことを世界に示した(北朝鮮のロケット、今回の打ち上げの注目点 警戒は必要だが、ICBMに直結はしない:2016年2月8日、参照)。

 次の目標となるのは熱防護技術だが、今年の3月15日に北朝鮮の朝鮮中央通信は、熱防護材の地上試験を金正恩第一書記が視察したと報道した。この時の試験は、弾頭の形状に成形した熱防護材に、ロケットエンジンの噴射を吹き付けて加熱するというものだった。このやりかたでは、入射熱量に対する熱防護材の損耗具合は計測できるが、実際の大気圏再突入時には、熱防護材の先端で断熱圧縮された大気から発生する光による輻射がかなり効いてくるので、大気圏再突入の模擬実験としては雑で、不充分である。

 6月22日の成功について朝鮮中央通信は「試験の結果、システムを現代化した朝鮮式弾道ロケットの飛行動力学的特性と安全性および制御性、新しく設計された構造と動力系統に対する技術的特性が実証され、再突入区間での戦闘部の耐熱特性と飛行安全性も検証された。(原文ママ)」としている。

大気圏再突入時の実地試験も目的か

 ここからは私の推測となる。

 これまで打ち上げに成功していなかったので、今回のムスダン発射は、ムスダン全体システムの動作試験が主目的であったことは間違いない。と同時に、弾道ミサイル実現に必須の熱防護材の実地試験も大きな目的だったのではなかろうか。