事故調査が示す、衝撃的な「なぜ」の連鎖
事故の直接原因は「搭載ソフトに与えるデータの一部が間違っていた」ためで、間違ったデータが使われたのは「一定姿勢を保持しているにも関わらず、回転していると誤認」したためである。
今回の中間報告が示す「なぜ」の連鎖は、かなり衝撃的だ。
まず、なぜデータが間違っていたか。間違ったデータを送信していたからだった。では、なぜデータを間違ったか。作成したデータをシミュレーターで確認していなかったためだった。なぜ、シミュレーターによる確認が行われなかったか。担当作業者がその必要性を認識していなかったためだった。
なぜ必要性が認識されていなかったか。そもそもひとみの姿勢制御に関するデータを打ち上げ後に書き換えること自体が、その重要性も含めて関係者に周知徹底されていなかったのである。打ち上げ前に作成する「運用計画を規定する文書」にも、書き換えが明確に記述されていなかった。
姿勢制御に関するデータの書き換えというのは、衛星にとってかなりのおおごとであり、間違えれば姿勢を維持できなくなる。
本来なら、関係者に全員周知徹底したうえで、万が一にも間違いが起きないように体制を組んで行うべきものだ。あるいは、予め打ち上げの前に、打ち上げ後のデータもひとみに搭載するコンピューターに書き込んで、軌道上で切り替えるようにしておいて、地上からの操作は調整に留めるべきだった。
重要性が関係者間で共有されていかなったので、データを作成するソフトウエア・ツールの手順書はなく、書き換えのリハーサルもなく、データ作成からシミュレーションを経て実際の書き換えにいたる作業の手順書もなかった。そして、メーカーのみならずスーパーバイザーとなるべきJAXAも、データ変更の運用状況を最終的に確認していなかった。
Powered by リゾーム?