おそらく、北朝鮮の意図はこれら三国の裏返しであろう。核兵器とミサイルさえ完成すれば、一点突破で米国を交渉の場に引きずり出すことができる。核兵器を向ける方向は北朝鮮が自由に決めることができる。残る2国も交渉に応じないわけにはいかない、というわけだ。

国家のリソースを核とミサイルに突っ込む賭け

 北朝鮮は取り憑かれたかのように、核とミサイルに乏しい国家のリソースを投入している。日本貿易振興機構(JETRO)の調査(こちら)によると、北朝鮮の2015年の国家予算は73億6300万北朝鮮ウォン(KPW)だった。この調査では、「公定レート(1ドル=98.4KPW)に基づき、ドル換算で7482万ドル規模」としている。今のレートでざっくり80億円程度でしかない。

 いかに人件費を考えなくて良いとしても、この規模の国家予算では、核とミサイルの開発は国家財政にとってあまりに危険な負担になっているはずである。

 北朝鮮が他国にとって脅威となる核兵器を持つためには、今後複数回の核実験が不可欠だろう。米国が実力行使も辞さずというブラフをかけ、中ロも核開発を非難している状況で、実験を強行すれば、両国の対応が厳しさを増すのは容易に予想できる。

 ロシアはどうか。この国は北朝鮮を強く非難する一方で「北朝鮮に対する脅しをやめ、問題の平和的な解決方法を見いだすべきだ」と米国を牽制し、6カ国協議再開すべきとしている。緊張緩和の主導権をロシアが握ることで、朝鮮半島への影響力を増したいという意志の現れだろう。同時に、このロシアの態度は、世界が北朝鮮に投げた最後の命綱とも言える。

着実に進む開発が、賭けから降りられなくさせている?

 しかしロシアの忍耐がどこまで続くかは分からない。今回のミサイルは、昨年6月のムスダン発射と比べると、かなりロシア領海に近い海域に落下した。ロシアは伝統的に国境付近の脅威に敏感に反応する国であり、今回のミサイル実験を快く思っているはずがない。今後もミサイルが領海近辺に落下し続ければ、「実力行使やむなし」と宗旨替えする可能性も否定はできない。

 前回書いた通り、北朝鮮としてはミサイル発射を継続して技術的完成度を高めつつ緊張感を高める瀬戸際外交を展開し、核実験実施のチャンスをうかがって、米国を交渉のテーブルに引き出すつもりなのだろう。しかし、今回のミサイル発射により、今後もミサイル発射を続ければ、核実験を控えても、米国だけでなく中ロも北朝鮮に愛想を尽かす可能性がはっきりと見えてきた。その先にあるのは戦争にせよ、国家崩壊にせよ、決して世界にとって幸福な事態ではない。

 一方で今回見たとおり、ミサイルの技術開発は着実に進んでいる。それが、金正恩最高指導者を、「核とミサイルの力で体制存続の危機を正面突破するしかない」という、危険な賭けのテーブルから離れがたくしているのだろうか。

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