技術開発とは反対の、稚拙な外交戦略

 技術面の確実な進歩をうかがわせ、脅威の増大を予想させたこととはうらはらに、北朝鮮にとって、今、この時期に新型ミサイル発射実験を行うことの、外交的意義には疑問がある。

 米国に対しては、ミサイル発射実験は瀬戸際外交で危機感を煽るという意味がある。米国は北朝鮮に対して核実験を行った場合、通常兵器による攻撃も辞さずというサインを送っている。たとえブラフであっても、北朝鮮はこれを無視できない。だから、危機感を煽って米国を交渉のテーブルに引きずり出すためには、ミサイル実験は有効な手段だ。

 ところが中国に対しては、このタイミングの新型ミサイル発射実験は逆効果もいいところだ。

 中国は5月14日と15日の2日間、北京に世界130カ国の代表を集めて「一帯一路国際協力フォーラム」を開催した。「一帯一路」は、習近平国家主席が2013年に提唱した、欧州とアフリカからアジアにかけての陸路(一帯)と海路(一路)の貿易インフラストラクチャーを整備するという構想だ。中国にとっては、21世紀の国際的な経済主導権を握るための戦略であり、同時に現国家主席が打ち出した重大構想でもある。そのフォーラムの開催初日の早朝に、新型ミサイルを打つということは、中国の面子を甚だしく損ねる。

 ただでさえ、中国と北朝鮮の関係は、かつての蜜月が嘘に思えるほど悪化している。4月には中国は北朝鮮からの石炭輸入を停止した。さらには、北朝鮮が核実験を強行すれば原油の北朝鮮への輸出を停止するとの意向も示している。

 4月には、中国は中朝国境付近に軍を展開した。5月に入ってから、「北朝鮮が4月に中国に対して6度目の核実験実施を通告したが、それに対して中国が核実験強行の際は国境を封鎖すると警告し、核実験は実施されなかった」とも報道された。

 このような状況での、習近平国家主席の面子をつぶすようなタイミングでのミサイル実験は、北朝鮮が中国に対して「おまえは当てにしていない。邪魔するな」とサインを送っているのと同じだ。米朝を中国が仲介するという緊張緩和プロセスは、ミサイル発射によって実現が遠ざかった。

ロシアからも反発を喰らう

 ロシアもプーチン大統領が15日、まさに一帯一路国際協力フォーラムへの出席のために訪問中の北京で記者会見を開き、北朝鮮のミサイル発射は「対立を助長する挑発だ」と今までにない厳しい調子で非難し、「ロシアは核保有国を増やすことには絶対反対で、北朝鮮が核保有国になることにも反対だ。非生産的で有害であり、危険だ」と核開発に対しても反対の立場を明確した。

 スーパーパワーの米中ロは、北朝鮮の核開発を許さないという点で一致した。北朝鮮の核兵器が完成すれば、どちらを向くか分かったものではない以上、これは当然の反応だ。

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