2008年の宇宙基本法成立以来、日本は安全保障を中心とした実利用に傾斜し、技術開発と宇宙科学への投資を抑制してきた。その結果、現在日本の宇宙開発は、世界から技術で後れを取りつつあり、かつ宇宙科学は長期計画を立てにくい状況におかれている。中国やインドは技術開発と宇宙科学に多大な投資を続けており、すでに日本を凌駕する成果も出してきている。それは、中国やインドが「日本以上に、人類社会の繁栄への寄与をしはじめた」ということに他ならない。

 政府がこの態度を続けるならば、これまで世界最先端の一翼を担ってきた日本のX線天文学が衰退することになる。それは長期的に見ると日本の衰退に他ならない。

28日に通信途絶、大きな破片も本体から分離

 ひとみは、2月17日に種子島宇宙センターからH-IIAロケットで打ち上げられ、その後搭載機器のチェックと動作確認に引き続き、試験観測による観測機器のチェックと調整を行っているところだった。ところが、日本時間(JST)3月26日午後4時40分にJAXAがオーストラリアに設置しているミンゲニュー局からひとみと通信しようとしたところ、不通になっていることが判明した。その後26日と28日に各2回、ひとみからの弱い電波を受信できたが、衛星がどのような状態になっているかの情報を得ることはできなかった。

 28日には、軌道上の人工物体をレーダーで監視している米国防総省戦略軍・統合宇宙運用センター(JSpOC)からひとみから小物体が分離したと発表があった。早い話が“壊れた”ことが判明したのである。分離した物体の数は当初5個となっていたが、4月2日は10個と修正された。また、そのうちのひとつはメートルオーダーの大きさがあるらしいことも判明している。

 ひとみは、高度約580km、赤道に対する傾きが31度の軌道を周回している。地球一周に要する時間は約1時間半で、1つの地上局の上空は約10分ほどで通過していく。上空通過のことを専門用語で「パス」という。

 運用は、主にJAXAの内之浦局(鹿児島県肝付町)から行っている。搭載観測機器による観測データと、衛星の姿勢、内部温度、太陽電池の発生電力や搭載機器の消費電力などのデータ(ハウスキーピング・データという)は、搭載データレコーダーに記録し、まとめて内之浦局でダウンロードしている。内之浦では1日5パスの程度の運用を行っている。

 この他、JAXAが保有する海外局では、軌道の精密計測を行うためにひとみからの電波を受信している。この電波にも受信したその時点におけるハウスキーピング・データが乗っている。受信したデータはその場では解析せずに記録し、後から分析することになっていた。

 事故前後に受信したデータの解析や、JSpOCの発表、事故発生後の地上からの観測などにより、4月2日時点までに下の表のようなことが起きたことが判明している。

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