前回、X線天文衛星「ひとみ」の打ち上げ成功に関する記事を、以下のように締めくくった。
あまりに早く、「日本が、人類社会の繁栄に寄与するか否か」の試金石が来てしまった。
3月28日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、ひとみに何らかのトラブルが発生し、観測ができない状態に陥っていると発表した。復旧に向けた作業が続いているが、4月5日現在、状況は好転していない。
ひとみが観測に復帰できるとしても、復旧作業は今後数カ月の長丁場になることが予想される。ひとみからは、少なくとも10個の破片が分離したことが確認されており、うち1つは、かなり大きなものであることが分かっている。今後の推移次第では、復旧断念、あるいは復旧したものの観測に大きな支障を来すことになる可能性は否定できない。
ひとみには、他に代替のない世界最先端の観測機器を搭載しており、十分な観測ができなければ、世界のX線天文学が停滞を余儀なくされることになる。前回書いた通り、X線望遠鏡を搭載するX線観測衛星は巨大化しつつあり、より一層の投資が必要になっている。しかも歴史的に見ると巨大化する望遠鏡は、科学の発展を根底から支える原動力であり、長期的にはこれほど役に立つ投資は他にはなかなかないといえるほどだ。
ここで問題になるのは、世界最先端の一角を担ってきた日本のX線天文学の危機に対して、日本政府がどのような態度をとるかである。
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