2006年8月の初の地下核実験は、TNT火薬0.8キロトン相当の爆発という失敗に終わった。が、2008年5月の実験は3~5キロトン相当、2013年2月の実験は6~7キロトン相当、2016年1月の実験は6キロトン相当、2016年9月の実験では10キロトン相当と、着々と威力を増している。

 この核兵器はいつ、北極星2号に搭載可能なぐらいに小型化されるのか――韓国国防省は、2016年1月の核実験では小型化技術の試験を行ったと分析している。2016年2月14日には、韓国統一部の洪容杓(ホン・ヨンピョ)長官が韓国国会において「ノドンに核弾頭搭載は可能だと考えている」と答弁した。ノドンと同クラスの北極星2号にも核兵器は原理的に搭載可能だし、北朝鮮にその能力はあるということだ。

経済制裁の強化以外の方法はないが

 ミサイルが完成してしまった以上、これ以上の脅威を防ぐために、国際社会は北朝鮮の核開発を徹底して抑止しなくてはならない。が、それは容易なことではないだろう。北朝鮮は1990年代以降一貫して核兵器開発の意志を捨てたことはなく、金正恩体制になってからはむしろ開発のピッチを上げてきている。おそらく多国間の枠組みの中での平和的な交渉で、北朝鮮の核兵器開発を止めることは難しいだろう。

 ここで思い出されるのは、イスラエルが「自国を攻撃する核開発を阻止する」という名目でイラクの原子炉を攻撃・破壊した、オシラク作戦(1981年6月7日)のような強硬手段だ。とはいえ、北朝鮮は、米国・ロシア・中国という3つのスーパーパワーの緩衝地域に位置する。それぞれに北朝鮮の扱いについて思惑がある以上、強硬手段実施への合意形成は極度に困難と思われる。

 となれば、経済的に北朝鮮を締め上げて、核兵器開発に資金が回らないようにしていくしか方法はない。かつては友好関係にあった中国と北朝鮮は、金正恩体制になってから対立を深めている。それでも中国は北朝鮮から石炭を買い入れており、2016年の輸入額は前年比12.5%増の11億8094万ドルだった。

 が、今回の北極星2号発射の翌日の2月13日、中国は北朝鮮産石炭1万6296トンを「水銀含有量が基準を満たしていない」として北朝鮮に返送する決定を下した。品質へのクレームはおそらく口実であり、中国としては「今の態度を続けるなら経済的に締め上げる」というサインを北朝鮮に送ったものだろう。中国は2月18日には、北朝鮮からの石炭輸入を今年いっぱい停止すると発表し、さらに北朝鮮を経済的に締め上げる方針を明らかにした。中国が、具体的にどの程度まで経済制裁を強めるかが、今後の動向に大きく影響することは間違いない。

 また、韓国の洪容杓・統一部長官は2月14日の国会答弁で、北朝鮮が韓国・北朝鮮合同で運営していた開城工業団地について、「開城工業団地に流れる資金の70%が朝鮮労働党に流れており、核開発や大量破壊兵器の開発に使われたことが確認された。巨額の資金が流入する団地を再開すれば、北朝鮮の大量破壊兵器開発を阻止という国際社会の協調から韓国が逸脱するとの印象を与えかねない」と答弁した。韓国は今年4月の大統領選挙を控えて、一部の大統領候補が北朝鮮との融和路線を唱えて「開城工業団地を再開する」と主張していたが、北極星2号の発射でブレーキが掛かった格好だ。

トランプ、プーチン、習近平…

 米国、中国、ロシア、韓国、日本――このすべての関係国が、北朝鮮が核兵器と固体推進剤を使った弾道ミサイルを揃えて実戦配備することを望んではいない。それが緩衝地域としての北朝鮮の価値を毀損し、地域を不安定化させるからだ。金正恩体制下でいったん核兵器搭載の弾道ミサイルが実戦配備されれば、それがどちらに向けられるか分かったものではないという恐怖もある。

 おそらく、これからしばらくの間、北朝鮮への経済制裁強化の動きが続くことだろう。が、そうなれば、金正恩体制の北朝鮮は核兵器開発のためにより一層、国内のリソースを絞り上げることになるのは間違いない。それは、今も国家レベルの経済的困難による生活苦にあえぐ北朝鮮の国民が、さらなる生活苦に直面することを意味する。

 固体推進剤ミサイルと核技術の合体は、かくもやっかいな事態を招いている。しかも、ロシアにプーチン大統領、中国に習近平主席という、専制的な指導者がキーマンになっている中で、よりによって米国にトランプ大統領が誕生した。彼は膠着状態を動かすワイルドカードになるかもしれないが、それはそれで想像するだに恐ろしい。極東の一角に存在する地上の地獄は、まだまだ続く。