この時点では、「北極星1号」は旧ソ連の開発した液体SLBM「R-27」のコピーではないかと推測されていた。つまりはノドンより大型のムスダンと同じだ。

 ところが2016年3月、北朝鮮は突如、固体推進剤を使用したロケットモーターの地上燃焼試験の様子を公開した。映像の固体モーター断面図には、SLBMを海中から打ち出すためのアダプターが書き込まれていた。このあたりから、世界は北朝鮮が固体推進剤のSLBMを開発していることに気付き始めた。

 2016年8月24日、北朝鮮は、SLBM発射能力を持つ新浦級潜水艦から「北極星1号」を発射した。北極星1号は500kmを飛行して日本海に落下した。固体推進剤の噴射はアルミ粉末が燃焼するので強烈な光を放つ。また噴煙はアルミが酸化したアルミナ粉末を大量に含むので白い。このため液体推進剤の噴射とは容易に区別できる。公表された映像では、海面から飛び出したSLBMの噴射は、明らかに固体推進剤のものだった。

 これにより、北極星1号が固体推進剤を使用していること、そして飛行距離と軌道から、北極星1号はR-27やムスダンよりも小さく、現在実戦配備されているノドン(射程1300km、弾頭重量700kg)と同規模であることが分かった。

固体推進剤と移動発射で“戦力として使える核”に

 それでも、この時点では、“北朝鮮が固体推進剤を実用化した”としても実際的な脅威は小さかった。北朝鮮はまだSLBM発射可能な新浦級潜水艦を1隻しか保有していない。また、SLBMは、位置を知られずに海中に潜み「いつ、どこから核兵器を撃ち込まれるか分からない」という恐怖を相手に与えるところに存在意義がある。北朝鮮が核の恐怖で圧迫したい相手は米国であり、太平洋から米本土に狙いを定めるには北極星1号は射程が短すぎる。

 もちろん日本にとっても北極星1号は脅威だが、北朝鮮からすぐ隣の日本を狙うなら、運用に潜水艦が必須のSLBMは無用だ。地上発射型弾道ミサイルのほうがずっと簡単である。

 しかし今回、北朝鮮は北極星1号を陸上発射型に改造した北極星2号の発射実験を成功させた。北極星2号は、キャタピラ式の車両から、SLBMと同じコールド・ローンチ方式で打ち上げられた。また、推定射程が1300kmということは、日本の領土の主要部をほぼカバーできる。

北極星2号の運搬車兼発射施設(朝鮮中央テレビからキャプチャー)。キャタピラ式であり、道路インフラが貧弱な北朝鮮国内でもかなり広範囲の移動が可能と推定される。
北極星2号の運搬車兼発射施設(朝鮮中央テレビからキャプチャー)。キャタピラ式であり、道路インフラが貧弱な北朝鮮国内でもかなり広範囲の移動が可能と推定される。

 北極星2号は北朝鮮領内を常に移動して位置の特定を防ぎつつ、命令があればすぐに発射する、という運用が可能だ。この北極星2号に核弾頭の搭載が可能になれば、日本は常に、どこにいるか分からない核ミサイルが日本を狙っている可能性を考慮しなくてはならなくなる。

 ここまでの経緯を通して、北朝鮮の技術者は優秀で粘り強いことが伺えるが、その資質は核兵器開発でも発揮されている。

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