ロケットの進路の制御は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)にとって非常に重要だ。とはいえ、ICBMを完成させるためには、打ち上げだけでは全然足りない。いったん宇宙空間に出た弾頭を大気圏に再突入させ、正確に目標へと誘導する技術が必要になる。

 核実験とロケット打ち上げができたからといって、ICBMがすぐにでも完成するわけではない。ここは注意が必要だ。

 再突入技術に必要な要素は、幸か不幸かすでに公開情報だ。しかし、実際に再突入を実施、制御するには、実験を積み重ねたノウハウが必要になる。

 例えば再突入のためには、再突入物体(弾頭)を「アブレーター」という熱防護材で覆う必要がある。アブレーターは、再突入時の空力加熱で熱分解して、弾頭の表面にガス層を形成する。ガス発生時の気化熱で内部を冷却すると同時に、ガス層の断熱効果で内部への伝熱を防ぐしくみだ。この時、熱分解の過程で発生したガスの膨張でアブレーターが欠けてしまうことがある。そうなればそこから熱が進入して弾頭が壊れてしまう。

 このようにアブレーターの設計・製造には、かなりの地上実験の積み重ね、そして実際の再突入実験による実証が必要となる。北朝鮮は今のところ再突入技術の開発には手を付けてはいない(再突入実験すら行っていない)ので、今回の打ち上げ成功をもって、すぐにICBMの脅威が現実になるわけではない。

より大型のロケット開発も進行中か

 もちろん今後も油断はできない。特に気になるのは、東倉里の射場施設増強だ。

 米ジョンズ・ホプキンス大学が運営する北朝鮮情勢の分析サイト「38 North」は、民間の高分解能地球観測衛星が取得した分解能1m以下の射場周辺の画像を使用して、継続的に射場設備の変化をウォッチして分析結果を公表している。それによると、前回2012年の打ち上げ以降、ロケットを発射する射点のタワーがかさ上げされ、20m近く高くなった。また、液体ロケット推進剤の保管や充填を行う設備も更新されている。

 これが何を意味するのか――すぐに考えられるのは、より大きなロケットの打ち上げだ。実際、北朝鮮は「銀河9号」というより大型で高性能なロケットの開発に着手しているという情報がある。

 大型のロケットを使えば、核爆弾の小型軽量化を徹底しなくとも搭載が可能になる。その一方で、液体推進剤を使うロケットは大型になるほど燃料注入に時間がかかり、発射準備時間が長くなって、有事即応という面では不利となる。

 いずれにせよ、金正恩体制が続く限り、同国のロケット開発は軍事利用を指向し続けるだろう。世界にとって頭の痛い問題だが、彼らの「できること」と「できないこと」を冷静に判断し、徒にパニックを起こさないことが重要だ。

前回2012年12月の打ち上げ時の画像。今回のロケットと外見上同一のものだが、記事冒頭の画像と比べると、現在の射点設備が大型化していることが分かる(画像は朝鮮中央テレビの放送からキャプチャー)。
■変更履歴
記事掲載当初、本文中で「2006年の9つ目の人工物体打ち上げで確認された1つめ【A】の物体」としていましたが、正しくは「2016年の…」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです [2016/02/08 12:20]