今回の打ち上げは午前9時半に行われた。するとどうなるか。打ち上げられた衛星と思しき物体は、直下の地方時が午前9時半の太陽同期軌道に入っている。これはあまり光学センサーによる地球観測に向いた軌道ではない。

 そもそも、事前に公表した打ち上げ時間帯は日本時間で午前7時半から午後0時半と異例に長い。前述の理由から、通常の地球観測衛星の打ち上げなら、これほど長い打ち上げ時間帯を設定することはありえない。

 北朝鮮は、2012年12月12日の銀河3号の打ち上げでも「地球観測衛星の光明星3号を軌道に投入した」と発表しているが、この時の打ち上げ時刻は日本時間午前9時49分だった(日本と朝鮮半島の地方時はほぼ同じである)。打ち上げ時刻が20分ずれると、それだけ上空通過時刻もずれ、地表の光の状態は変化する。つまり2機の衛星に同じセンサーを搭載していても、得られるデータは異なり、比較して解析することが難しくなる。2012年4月13日の失敗した打ち上げでも、打ち上げ時刻は日本時間午前7時39分だった。

 この3回の打ち上げ時刻やそのズレからすると、北朝鮮にあまり本気で地球観測を行うつもりはなく、せいぜい「デジタルカメラで地表が撮影できれば良い」という程度に考えている、と推測できる。

目的はコースティング技術の確認か

 次の注目点は、情報の公開度だ。北朝鮮は1998年のテポドン打ち上げでは、国際的にロケット打ち上げに必要な手続きを一切無視していきなり打ち上げた。

 しかし2012年からの銀河3号打ち上げでは、国際海事機関(IMO)や国際民間航空機関(ICAO)にロケット各段の落下海域や日時を通告したり、国際電気通信連合(ITU)に衛星の使用する周波数を通告する(正規には事前に使用申請をして国際調整を行う必要がある)といった、最低限の国際的なルールを守るようになった。特に2012年4月の打ち上げでは海外からの報道陣を受け入れて東倉里の射場施設を取材させている。前回2012年12月の打ち上げでは、打ち上げ直後に朝鮮中央テレビで、打ち上げの動画像が放送された。

 ところが今回は国際機関への事前通告はあったものの、海外報道陣への施設公開も、打ち上げ後の動画像放送もなかった。朝鮮中央テレビでも、打ち上げの様子の静止画像が流れただけで、放送の冒頭で流れた打ち上げの動画像は、前回2012年12月の打ち上げ時の映像の流用だった。

 地球観測衛星打ち上げと言いつつも、本気で地球観測をしようとはとても思えない様子、前々回、前回よりはるかに後退した情報公開――この2つを考え合わせると、2012年4月に金正恩第一書記が党・国家・軍の三権を掌握してから以降の北朝鮮が、ロケットの持つ軍事的価値の追求と、それによる金正恩氏の権力強化に、より一層傾斜していきつつあることが見えてくる。そのために「なりふり構わず“成功”の実績を作る」のが、今回の打ち上げだったのだ。

 軍事利用の面から言えば今回の主眼は、前回も実施した第3段によりロケットの進路を真南の方位角90度から、太陽同期軌道の97.4度に変更するコースティング技術の確認だろう(詳しくはこちら、北朝鮮、予想より高度だった打ち上げ能力)。