大胆不敵な態度、細心の投資戦略

 製品を矢継ぎ早に改良し、高性能・低価格をセールスポイントに、一気に市場シェアを取りに行く。多少トラブルが出て顧客に迷惑がかかっても、あくまで強気に振る舞って顧客をつなぎ止める。その上で素早く問題点を修正していく。

 このやり方は、次々にバグを出しながらも矢継ぎ早の改良と新バージョン投入によって一気に市場シェアを拡大した、Windows95からWindows98にかけてのマイクロソフトを思わせる(「危ない橋を素早く渡る!」スペースXは止まらない:2016年9月13日「火星に行くぞ!」と決めた企業の研究開発戦略:2016年9月14日参照)。

 と、同時に、強気に出るために必要な投資は惜しまない。

 具体的には射点設備の拡充だ。9月1日の爆発事故によりLC-40射点も甚大な被害を受けた。が、スペースXは、米航空宇宙局(NASA)ケネディ宇宙センターにあるLC-39A射点が使えるので東海岸からの早期打ち上げ再開に障害はないと表明した。ちなみに、米国の場合、商業衛星の大多数を占める静止衛星の打ち上げは東側に海が開けた米大陸東海岸からしかできない。1月14日の復帰打ち上げで使った西海岸ヴァンデンバーグ空軍基地の射点は、地球を南北に回る極軌道打ち上げ用である。

 LC-39A射点はかつてスペースシャトルを打ち上げるのに使っていた施設で、同社はNASAからここを借りて新ロケット「ファルコン・ヘビー」用に改装していたのである。ファルコン・ヘビーは、ファルコン9の発展型なので施設はファルコン9にも使用可能。つまりLC-39Aからファルコン9は打ち上げ可能というわけである。この他同社は2020年までにニューメキシコ州にも静止軌道向けの新射点を建設する考えだ。

 当初は、11月中に打ち上げを再開するとしていたが、事故調査が難航したことで12月、そして1月とスケジュールは遅れた。年が明けて1月2日、事故調査の結果が公表され、打ち上げ再開は1月8日とアナウンスされた。結局、30号機は1月14日に打ち上げられ、完璧な成功を収めた。

 東海岸からの復帰後初の打ち上げは、現状では1月26日を予定している。ケネディ宇宙センターのLC-39A射点から、米衛星通信会社のエコースター社の静止通信衛星「エコースター23」を打ち上げる。

 爆発事故を強気の対応で乗り切ったスペースXだが、これで問題がすべて解決したわけではない。スペースXの打ち上げは常に予定から遅れており、爆発事故によりさらに遅れが顕著となった。このため同社は現在大量のバックオーダーを抱えている。それぞれの顧客は打ち上げ時期を指定しているので、迅速に大量の打ち上げを行ってバックオーダーを解消しなくては、「定めた時期に打ち上げができない、信頼性の薄いスペースX」という評価が定着してしまう。