事故原因は液体酸素タンク内に設置した高圧ヘリウムタンク

 昨年9月1日の爆発事故は、イスラエルの通信衛星「AMOS6」の打ち上げに向けて、東海岸フロリダ州のケープ・カナヴェラル空軍ステーションにあるLC-40射点に立てたファルコン9ロケットに推進剤を充填するテスト中に発生した。1月2日に公表された事故調査報告によると、事故原因は、第2段液体酸素タンクの中に設置した高圧ヘリウムタンクにあった。

 ファルコン9は推進剤タンクを加圧するためにヘリウムを使っている。そのため、各段の液体酸素タンク内にドブ漬けする形で高圧ヘリウムタンクが設置してある。このタンクはCOPV(Composite Overwrapped Pressure Vessel)と呼ばれ、アルミ合金の内張りの外側に炭素繊維複合材料を巻き付けて強度を上げた構造をしている。事故はまず、第2段液体酸素タンク内に設置した3個のCOPVのうちのひとつで、アルミ合金の内張りと炭素繊維複合材料が両者の熱膨張率の違いなどによって剥離し、発生した隙間に液体酸素が入り込んだ。次いで、炭素繊維の破断や破壊によって発生した熱で着火して爆発したのだった。温度環境によっては隙間に入った酸素は固体化する可能性もあり、この場合は液体のままよりも一層爆発しやすくなるという。

 事故の背景には、ファルコン9の急速な改良があった。2010年に初打ち上げを行ったファルコン9は「バージョン1.0(v1.0)」と呼ばれていた。v1.0は5機で運用終了し、2013年9月からはエンジンをパワーアップし、全長を延ばした上で設計を洗練させた「ファルコン9 v1.1」に移行した。

 2015年12月からは、さらにパワーアップし、第1段に着陸脚を標準装備した最新バージョンの「ファルコン9 v1.1FT(Full Thrust)」通称“フル・スラスト”の運用が始まった。フル・スラストでは、推進剤であるケロシンと液体酸素を冷却して密度を高めた上で、推進剤タンクに注入する新しい技術が採用された。密度が高まると同じ容量のタンクにより大量の推進剤を詰めることができるので、打ち上げ能力が向上する。

 しかし、液体酸素の温度を下げた結果、液体酸素タンク内にドブ漬けとなったCOPVに以前のv1.0/v1.1よりも強い熱負荷をかけてしまったらしい。急速に進んだロケットの改良に、設計の安全性・妥当性の確認が追いつかなかったわけである。

 1月14日の復帰打ち上げでは、1)高圧ヘリウムの温度を支障のない範囲で高めにする、2)冷却した推進剤を充填する速度をゆっくりにする――などの暫定的な事故防止策が採られた。今後スペースXは、COPV回りの設計を根本的にやりなおして安全性を高めるとしている。

 これは以前にも触れたが、スペースXの経営手法は、既存の官需主体の宇宙企業よりも、ITベンチャーに近い。