新元号に起こること(5)IT業界はどう動く?

 さて改元につきものなのが、様々なビジネスに与える影響です。例えば「印刷・製本業界では、新元号を早めに把握しないとカレンダー・日記・手帳などの製造が間に合わない」とか「ハンコ業界では元号訂正印の特需が起こるかもしれない」といった類の話です。

 とりわけ状況が注目されるのはIT業界ではないでしょうか。思い起こせば前世紀の終わりごろ「2000年問題」が大きな社会的関心事になりました。2000年の到来にともない、日付を管理する旧式のプログラム(例:西暦を下2桁で管理するなど)で不具合が生じる可能性を指摘する言葉でした。これと同様、来る改元でも、改元への対応が不十分な旧式のプログラムにおいて何らかの不具合が生じるかもしれません。また改元への対応がシステム的に整っている場合でも、その対応作業にリソース(いわゆるヒト・モノ・カネ)が食われる問題もあります。

 これに加えて、専門家以外にはあまり知られていない別の問題もあります。それは「文字コードの改訂」という大問題です。新元号対応に関わる技術情報を発信しているマイクロソフトのブログ「Japan New Era Name Support Blog」などがこの問題を指摘しています。

 各種情報を総合すると、問題のあらましは次のようなものです。現在、日本語の文字コードでは「㍾・㍽・㍼・㍻」といった合字(複数の文字を組み合わせて一文字化したもの)にもコードを割り当てています。ということは新元号の登場に伴い「新元号用の合字」というニーズも発生することになります。そこで関係者の間で「そもそも新元号を合字にするのかどうかの議論」「その文字をどのコードに割り振るのかを決める議論(困ったことに、ユニコードでは㍾・㍽・㍼・㍻の前後のコードに空きがない)」「国際標準化」「各OSの対応」「フォントの対応」「アプリケーションの対応」などの取り組みを進める必要があるというのです。

 この問題で重要な点は「ひとつの企業や国では収まらない議論・手続き・作業を必要としている」ということでしょう。これは改元の知られざる、かつ、地味に大きな影響だといえそうです。

平成に起こること(1)「旧世代の象徴」に変化する

 さて改元を期に「新元号」に起こる出来事もあれば「旧元号」に起こる出来事もあります。つまり「平成」にも様々な出来事が起こる可能性があるのです。まず指摘したいのは、平成が「旧世代を象徴する言葉」に変化することです。

 これは「昭和」に起こった出来事を振り返ることで、ある程度予測ができます。例えば「昭和歌謡」という言葉があります。個人的にはこの言葉を次のように理解しています。「そもそも昭和時代に発展した大衆音楽である『歌謡曲』について、ことさら『時代性・音楽性』を強調するときに使う言葉」。この理解の妥当性はわかりませんが、ここでの「昭和」という修飾語が「旧世代を象徴する表現」であることは間違いないでしょう。

 このほかにも、昭和を思い起こさせる感覚を意味する「昭和レトロ」、少し古風な顔つきを意味する「昭和顔」などの俗語も、「昭和」を旧世代を象徴する表現として利用しています。

 そういえば1990年(平成2年)の新語・流行語大賞では、特別部門において「昭和生まれの明治男」という言葉が選ばれています。受賞者は同年に現役を引退したプロ野球投手の村田兆治氏と淑子夫人でした。故障・リハビリの末に奇跡のカムバックを果たした村田投手の姿について、夫人がこのように表現したのです。

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