しかしながら、月の名前を具体的に決定する際に問題が生じます。旧暦で月名を決める際の最大のルールはこうです。「冬至を含む月は11月、春分を含む月は2月、夏至を含む月は5月、秋分を含む日は8月となる」。これにしたがって、前掲の表を書き換えたものが下表(2)です。ここで「ある不具合」にお気づきになったかもしれません。

 そう。「月がはみ出す」「月が足りない」という問題が起こるのです。例えば旧暦2033年8月と11月の間には、本来9月と10月が入らなければなりませんが、枠からはみ出してしまいます。逆に旧暦2033年11月と34年2月の間には、本来33年12月と34年1月が入らなければなりませんが、枠を埋めるには足りません。

 月が枠に足りない場合は「閏月(うるうづき)」を設けて解決する方法があります。これは旧暦ではよく登場する方法です。しかし閏月を置くためのルールも、当該期間に限って破綻してしまうのです。なお閏月ルールの詳細については、かなり複雑ですので、ここでは省略させてください。

 とにもかくにも、表中のイ月・エ月・オ月・カ月は、旧暦の何月なのかが分かりません。もっと言えば「11月をずらすかどうか」でウ月の月名すら変わる可能性もあるわけです。

 このような不具合は、いわば「旧暦(天保暦)のルール」が不完全だったために発生するもの。天保暦が定まった1844年から2032年までは「たまたま」ルールの不完全さが表出しなかっただけなのです。このルールをうまく変更しておかないと、2147年、2223年にも同じようなルール破綻に直面することになります。

 そこで暦の関係者の間では、ルールをどのように変更すればよいのかについて、検討が続いているようです。

2045年問題 ~シンギュラリティーの到来~

 世界トップクラスの棋士であるイ・セドル(韓国)と、グーグル・ディープマインド社が開発した人工知能「アルファ碁」との囲碁5番勝負が大きな話題になっています。

 事前の予想はイ・セドルが優勢というものでした。いや、実際には多くの関係者がイ・セドルの「圧勝」を予想していました。しかしながら執筆時点において、アルファ碁は初戦から3戦まで連勝し、勝ち越しを決めました。

 この出来事は、広く一般社会に衝撃を与えました。IT・人工知能・科学技術史・未来学などに詳しい人々の間では「『シンギュラリティー』を感じられる出来事が、こんなに早く訪れるとは思わなかった」との感想が飛び交っています。

 このシンギュラリティー(singularity)とは「技術的特異点」と訳される概念のこと。つまりテクノロジーが高度に発達することで、非連続的かつ不可逆な影響が社会に及び始める状況を指します。