センテンススプリング(文春の言い換え)のような英語直訳型の言葉遊び――本稿ではこれを「直訳型フレーズ」と呼びます――について歴史を振り返るコラムの後編です。

 前編では都道府県名の直訳型フレーズ(静岡→サイレントヒルなど)、ルー語(藪から棒→藪からスティックなど)、コギャル語(しらける→ホワイトキックなど)を紹介しました。ではコギャルよりも前の時代には、どんなフレーズが登場していたのでしょうか。

パンピー(1960年代以降)

 数ある直訳型フレーズの中でも、「浸透度がもっとも高い」と筆者が考えている言葉があります。「パンピー」です。

 パンピーとは「一般人」のこと。一般人の「人」の部分を「ピープル(people)」に置き換え、さらに「いっぱんピープル」の中央部分を取り出した構造です。

 個人的体験では、この言葉を「コギャル語」として認識していたように記憶しています。しかし実際は、コギャル文化よりもずっと昔から存在していました。

 例えば1970年代から80年代にかけて、パンピーは暴走族やツッパリの用語だったとの話が残っています(参考:ウェブサイト「日本俗語辞書」など)

 さらに昔のパンピーには「ノンポリ」という意味もあったようです(参考:現代用語の基礎知識1991年版)。仮にノンポリ説が本当だとすると、初出時期は1960年代末期となります

 ちなみにノンポリは、大学紛争の時代に流行した言葉。non-politicalを略した言葉で、政治問題や学生運動に無関心である様子や、そのような人のことを指しました。活動家の立場から見た時、そうでない人(学生)はノンポリであり、おそらくパンピーであったのでしょう。これが、筆者が把握する限りで最古のパンピーです。

 いっぽうでパンピーを「イッピ」と表現する人もいます。「いっぱんピープル」の「いっ」と「ピ」の部分を取り出した表現です。筆者が確認したところ、1980年代には存在していた言葉です。

 この言葉が、なぜか現在ではジャニーズファン(俗にいうジャニオタ)の用語として生き残り続けています。ただしジャニーズ用語におけるイッピとは、ファンではない人を指すのはなく、ライトなファン(例えば大きなイベントの時だけタレントを追いかけるレベルのファン)を指しているようです。熱狂的なファンの「微妙な心理」が見え隠れする表現ですね。

 ともあれパンピーという言葉は(筆者の見方が正しければ)「1960年代末から現代まで、それなりの存在感を保ちながら生き延びている」ことになります。