例えば、欧州委員会が公表する「Fiscal Sustainability Report」が有名だ。同委員会は3年に1回の頻度で「Aging Report」も作成し、社会保障費(年金・医療・介護)について、2060年までの規模(対GDP比)を推計・公表している。また、米国連邦議会予算局(CBO)は、「Long-term Budget Outlook 2012」において、今後75年間(2087年まで)の将来を推計し、「ベースライン・シナリオ」と「代替シナリオ」の2種類を公表している。

 一方、英国の財務省は、1998 年に財政法(Finance Act 1998)を制定して以降、今後30 年間の長期的な財政見通し(Illustrative long-term fiscal projections)を毎年公表している。さらに、それを補完(厳密には、予算編成方針を明らかにする「Pre-Budget Report」の付属資料)するものとして、約50年間に及ぶ長期財政報告書(Long-term public finance report)を2002年から毎年公表している。

独立機関の設置が世界の潮流

 なお、英国では、経済財政見通しが政治的動機により楽観的になることを防ぐため、2010年5月、独立して見通しを行う財政責任庁(Office for Budget Responsibility)を設立した。現在では、同庁が経済財政見通し(Economic and fiscal outlook)の作成や公表、財政の持続可能性に関する評価などを行い、目標の達成可能性を判断することになっている。

 以上のほか、いくつかの先進国では、政治的な意思決定プロセスである予算編成を縛る目的も含め、財政ガバナンスを改革する動きが広がってきている。例えば、より拘束力の強い中期財政フレーム、トップダウン型の予算編成、財政予測やリスクに関する包括的な報告書の作成、予算編成の前提となる指標の作成やルール順守を評価する「独立財政機関」の設置などが挙げられる。

 このうち「独立財政機関」(IFI:Independent Fiscal Institutions)は、選挙で選ばれるものではない専門的な集団で構成される、政治的独立性を有する非党派の公的機関をいう。財政運営に対する客観性を担保するために、予算編成のためのマクロ経済予測や財政パフォーマンスの監視、財政政策について規範的な助言や指針を政府に提供することを任務とする。

 独立財政機関としては、オランダの経済政策分析局(1945 年設立)やアメリカの議会予算局(CBO:Congressional Budget Office、1974 年設立)が長い歴史をもち有名だ。

 2000年以降、OECD諸国で同様の機関の設立が相次いでいる。例えば、上述の英国の財政責任庁(OBR:Office for Budget Responsibility、2010年設立)のほか、スウェーデンの財政政策会議(2007 年)、カナダの議会予算官(2008 年)、アイルランドの財政諮問会議(2011 年)などである。

 OECD(経済協力開発機構)諸国のうち独立財政機関を設置した国の数は2014年で20を超え、過去10年間で3倍になった(図表3)。このため、OECDは最近、「独立財政機関の指針に対する委員会勧告」を公表している。現在のところ日本において、独立財政機関は存在しない。

図表3:OECD 諸国における独立財政機関の数
図表3:OECD 諸国における独立財政機関の数
(出所)OECD資料
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 他方、諸外国の独立財政機関の中には、予測の信頼性や精度を高めるため、予測誤差に関する分析や事後検証として、経済学者や民間エコノミストなどとの間で「ピア・レビュー」(peer review)を行う機関も存在する。日本も、統計改革の次のターゲットとして、独立財政機関の設置やピア・レビューの導入を含め、政府予測の機能強化に関する検討を早急に進めるべきである。