景気循環は考慮されなかった?

 内閣府は、「景気動向指数研究会」(座長:吉川洋・元東大教授)の議論を踏まえて景気循環を判定している。同研究会が2015年7月24日に公表した資料によると、2009年3月にスタートした第15循環の景気の山を2012年3月に、谷を2012年11月に確定した。これは現在の景気回復が安倍政権発足直前の2012年11月からスタートしたことを意味する。

 また、この資料から、過去の景気拡張期の平均は約3年(36.2か月)であることが読み取れる。したがって、現在の景気拡張期はオリンピック景気が終了する2020年度に向けていつ終わってもおかしくない。にもかかわらず、前回版の中長期試算では、景気循環を考慮しなかった可能性が高い。

 さらに、国の基礎的財政収支対象経費(対GDP)や地方歳出(公債費を除く、対GDP)がPB改善の要因に作用しているのは、内閣府が日本のGDP統計を国連が定めた新基準に対応するように改定した影響が大きい。2015年度の名目GDP統計は、新基準では約532兆円となり、旧基準よりも約31兆円も増加した。その分、国や地方の歳出(対GDP)が縮小している。

 にもかかわらず、図表1や図表2における〇印の折れ線(前回版と最新版のPB変化幅)が2016年度以降でマイナスの値となっているは、GDPの基準改定の効果よりも、国や地方の税収等(対GDP)の下方改定の効果の方が大きかったことを意味する。

「会計操作」の影響はない

 なお、若干細かい議論だが、2017年度の予算編成において国は「会計操作」を行っている。外国為替資金特別会計の運用益の3割以上は特会に残すとの原則を破り、運用益2.5兆円の10割(2016年度比で0.85兆円増)を一般会計の歳入に繰り入れ、税外収入を増やしているのだ。

 このため、「図表1や図表2のPB赤字は過少評価されている」と指摘される可能性もあるが、それは正しくない。理由は単純で、上述の会計操作により、国の一般会計のPB赤字を縮小させることができても、その同額分だけ、国の一般会計以外の特別会計全体のPB赤字は拡大してしまうためである。図表1や図表2のPB予測は、国の一般会計や一般会計以外の特別会計を含むもので、会計操作の影響は受けない。

 第2の課題は、中長期試算の予測期間が短いことである。内閣府が発表する中長期試算は、2025年度まで約10年間を対象に予測している。実は諸外国は、より長期の財政に関する将来推計を公表している。

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