一方、自然栽培は人為的な資材を必要としません。動植物・微生物・菌類などあらかじめ自然に存在するものと一緒になって、米をつくるのです。これだと、地球や生態系が変わらない限り、永遠に作物を得ることができる。もっとも効率的な農法と言えるでしょう。

 これこそ、あらゆる意味で「いのち」と「食」をつなぐ方法。彼の目は、地球の中側まで見据えていました。

 これこそがクリエイティブ思考。外部やツールに頼らず、自分の頭の中で課題を解決する。中川さんの本質です。

自然栽培で最も大変だったことは?

 中川さんの自然栽培で最も大変だったのは、やはり除草。1年目は、返却してもらった田んぼに、昨年まで使用していた除草剤の効果がまだ残っていた。雑草がひどくなったのは、3年目4年目。しかし彼はちっともめげません。石山師匠のやり方を学んでいたからです。

 師匠の田んぼには、除草おばさん隊がいました。15人ほどのおばさんが、手際よく雑草を取り除いていくのです。中川さんは、これを見ていて農業の分業化のアイディアを思いついたのです。

 たとえば、日当8千円で除草隊をつくれば、人手不足も解消するし、田んぼをふやすこともできる。それより、除草のプロとして全国を回れば、それだけでもかなりの収入を得ることができる。さすがに、発想が自由です。実際、いろんな若者に声をかけて実行しているそうです。

 多くの農家が、自然栽培をやらない理由のひとつが、この除草作業の大変さ。でも、固定観念をはずしてしまえば、やり様はいくらでもある。それこそ、農業体験したい都会の人も対象になるでしょうし。

 こういう自由な中川さんですが、米づくりには人一倍情熱を傾ける。仲良しの奥さんとふたりでせっせと手間のかかる自然栽培。そんなふたりだから、作り方は違っても、近所の農家の人も暖かくつきあってくれる。中川さんの明日の農業は、日々の暮らしでも実践しているようでした。

 そんな彼の誘いでも、なかなか自然栽培の仲間はふえない。キロ当たりのお米を高く買うからと言っても、多くは尻込みをしてしまうそうです。結局、農民は儲からないと言いながらも、お金よりもいままでのやり方を変えたくない体質があるのかもしれない。中川さんはそう思うようになりました。

次の一手は?

 そこで中川さんは次の手に。「農FUTURE」という農業の明日を考える会を結成。いろんな農家の人とそれを応援する一般人で議論を戦わせるイベントを実施しました。3回目は先日渋谷で行われ、自然栽培農家、有機栽培農家、慣行栽培農家が一堂に会するという前代未聞の討論会です。

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