キムヨンラン法の施行と前後して、韓国の国会では企業の接待費が問題になった。韓国国税庁によると、韓国企業59万1684社が2015年に使った接待費は前年比6.8%増の9兆9685億ウォン(約8972億円)だった。中でも遊興業(バーやクラブ)に分類されるお店で使った金額が1兆1418億ウォン(約1028億円)とかなりの割合を占めていることが問題になった。与野党が声をそろえて、「遊興業に使っていた分を社員へのインセンティブに使うよう改善すべき」と主張した。

韓国銀行の総裁まで「民間の消費に否定的な影響を与える」

 不正をなくす目的の法律が施行されることに異論はないはずだと思っていたら、接待や贈り物ができなくなると韓国経済に悪影響を与えるという主張が浮上した。

 農林食品部(韓国の「部」は日本の「省」)は、「キムヨンラン法の影響で5万ウォンを超える農畜産物ギフトセットが売れなくなり、高級焼き肉店の売り上げも減少、合わせて年間6兆5000億ウォン売り上げが減少する」と主張した。

 韓国経済人連合会(日本の経団連のような組織)が設立した韓国経済研究院は、「キムヨンラン法により、飲食店とゴルフ業、ギフト流通業が打撃を受け、年間11兆6000億ウォンの経済損失が発生する」と主張した。

 韓国の経済政策を担当する企画財政部も、2016年上半期の経済展望を発表した際に、「キムヨンラン法の影響で消費が減ると予想され、経済成長を制約する要因となる」と発表した。

 韓国銀行の総裁すら「キムヨンラン法は民間の消費に否定的な影響を与えると予想している」と発言。接待や賄賂がないと韓国経済が回らないかのような印象を与えた。

腐敗の防止は経済成長につながる

 一方で不正腐敗がなくなることで韓国経済はよくなるという研究結果もあった。

 国民権益委員会が現代経済研究院に依頼して実施した調査によると、韓国の清廉指数がOECD平均に近づけば、GDP(国内総生産)の成長率が高まるという。これはドイツのベルリンに本部があるNGO、トランスペアレンシー・インターナショナルが毎年公開している腐敗認識指数(Corruption Perceptions Index)を基にした研究である。腐敗認識指数は、世界各国の専門家に自国の公務員と政治家が腐敗していると思うかどうかの認識を調査するもの。清廉と思われているほど、その国のポイントと順位は上位になる。

 2015年の調査で、韓国は56ポイントを獲得し168ヵ国のうち37位だった。ちなみに日本は75ポイントで18位、最下位は北朝鮮とソマリアでそれぞれ8ポイントだった。トランスペアレンシー・インターナショナルは、70ポイント以上の国は「全般的に透明に運営されている」、50ポイント以上の国は「絶対的な不正腐敗から逃れた程度」と位置づけている。

 現代経済研究院は、「キムヨンラン法が施行された後、韓国の腐敗認識指数がOECD加盟国平均の67.2ポイントに向上すれば、1人当たりGDPは138.5ドル増加し、経済成長率は0.65%ポイントほど高まる」と分析した。キムヨンラン法が韓国を変えるきっかけになるのは間違いない。