「あ、またか」ではいられない

 度重なる北朝鮮の挑発に慣れきったソウルの市民の中には、北朝鮮が挑発行為におよんでも、「あ、またか」と思うだけで、日頃と変わらぬ生活をする人が多い。だか、今回の核実験では動揺が広がった。

 聯合ニュースやKBSをはじめとする韓国メディアは9月11日、「北核、ソウルで少なくとも24万人死亡」という見出しを打ち、シミュレーション結果を一斉に報じた。韓国国防部によると、北朝鮮が実験した核爆弾の威力はTNT爆薬10キロトン規模と推定。これがソウル市内で爆発すれば少なくとも24万人が死亡、134万人が被爆するという。ソウル市の人口は約1000万人である。

 米国国防省の傘下にある国防脅威減少局(Defense Threat Reduction Agency)によると、威力が15~20キロトン規模なら、ソウル市内だけで少なくとも62万人~113万人が死亡、全国で約275万人が死亡するというシミュレーション結果もある。15キロトン規模の場合、爆発地点から半径150メートル内の建物は全滅、半径1.5キロ内にいる人は全身3度の火傷、半径4.5キロまでの建物は半壊、と国防脅威減少局は予想している。

 シミュレーション結果を実際に見て、今回の核実験がどれだけ深刻なものなのか肌で感じることができた。北朝鮮が何をするかわからない状況になりつつあるのでなおさらである。

米爆撃機がグアムから韓国へ

 公営放送のKBSはこのシミュレーション結果をもとに、次のように報じた。「『北朝鮮の核に立ち向う唯一の手段は核兵器しかない』という主張がある。「冷戦時代は『核保有国同士で戦争をするとお互いが全滅する』という恐怖が核の使用を抑制した」。

 「国内(韓国)でも核武装すべきという世論が高まっている。韓国には技術があるので6カ月もあれば核武装できる」

 「(韓国は)1975年にNPTに加入したが、合法的に脱退する方法がある。同条約は『非常事態により国益が危険にさらされる時は脱退する権利がある』と明記している。韓半島非核化宣言が紙くずになった今、米国などの反対があっても発想の転換が必要だ」

 韓国青瓦台(大統領官邸)のキム・ギュヒョン外交安保秘書は9月11日、「韓半島に核があってはならない。核兵器のない世界を作るビジョンを韓半島からスタートさせるのが政府の公式の立場である」として、韓国政府は核武装論に否定的であることを明確にした。

 ただし、「北韓が5次核実験を含む挑発を行い、国連安全保障理事会の決議に露骨に違反していることに対して、全ての外交・軍事的努力で対応する」と発言。「軍事的」という単語を初めて使用した。この「軍事的」という表現は「北朝鮮を先制攻撃するという意味なのか」と騒ぎになったが、青瓦台は「今すぐ何かの軍事的措置を取るということではなく、韓米連合防衛力の増強など多様な措置を検討するということだ」と説明した。

 9月12日には駐韓米軍が、グアムにあるアンダーソン基地からB-52、B-1B、B-2戦略爆撃機を駐韓米軍オサン基地に移動し、北朝鮮に圧力をかける計画を発表した。韓国と北朝鮮の間の軍事的緊張はいっそう高まる見込みだ。