6月20日付ファイナンシャルニュースによると、検察は「韓国メディアの捜査状況に関する報道が正確すぎて驚いた。間違った報道もあるが、何が間違いなのかは教えられない。『捜査状況が露出してしまう』とロッテグループの弁護団が抗議したから」と発言したそうだ。

 さらに、「韓国メディアが報道した疑惑の中には検察が知らなかったロッテグループの事情もある。検察は、捜査対象として今後検討すべき事案も多いとみなしている」と報じた。韓国メディアの過熱する報道が検察の捜査を助けているということなのだろうか。

CJグループへの捜査との類似点

 6月18日付の朝鮮日報に面白い記事が登場した。検察が進める今回の捜査が3年前に行なわれたCJグループに対する捜査に似ているという記事だ。CJグループ捜査は、大規模な家宅捜索を皮切りに会長をターゲットにした捜査が急展開。捜査開始から1ヵ月半あまりで検察はCJグループのイ・ジェヒョン会長を拘束した。容疑は会社資金の横領と背任、租税逃れ。朝鮮日報は、CJへの捜査とロッテへの捜査を以下のように比較した。

 「CJグループへの捜査は新しい検察総長が就任して初めての企業捜査だったため、確実な証拠を確保してから捜査に乗り出した。ロッテグループへの捜査も新しい検察総長の就任後初めての企業捜査なので、既に十分な内部捜査をしているはず」

 「韓国政府が経済活性化にすべてをかけている中、検察が解剖できる(捜査できる)企業はそう多くない。国家経済に影響を与えない範囲で、経済民主化(大企業による独占や横暴をなくし公正取引を実現すること)の価値を最大限見せつけられる企業を捜査しないといけない。CJもロッテも輸出企業ではなく内需中心企業。捜査によってロッテのビジネスが一時的に被害を受けるとしても、それが国家経済に与える影響はそれほど大きくない。検察の負担も重くない」

 「ロッテは兄の辛東主(重光宏之)SDJコーポレーション会長が検察の友軍として手を挙げており、捜査がしやすい。兄弟または家族間で権力闘争を経験した財閥は(対立する勢力がお互いの不正を暴露するので)検察が残らず捜査し、裁判でも(横領や背任で)有罪にした。信憑性の高い内部告発を受けて捜査をするからだ」

財閥捜査は、経済民主化をアピールする隠れ蓑?

 朝鮮日報の記事は、韓国政府が公正取引のルールを確立するため努力していることを見せるために、財閥グループに対して大々的な捜査を行なったと受け取れる内容である。

 与党セヌリ党のチョン・ジンソク院内代表(党の代表議員、党代表とは別)も6月20日、朝鮮日報の記事内容と似た発言をした。チョン院内代表は、就任後初の演説で「正義のために財閥改革が必要」だと強調しつつ、ロッテグループの捜査を取り上げた。

 チョン院内代表は、以下のことを強調した。
「90歳を超えた父親と二人の息子がグループの経営権を巡り韓国と日本を行きかいながら喧嘩している」
「資本主義社会において所有権は尊重されるべきだが、(設立者の)子供や一家、親戚までが経営に関与するのは問題」
「総帥一家が企業を分け合い経営権を行使するので、(家族が経営する)系列会社にしか仕事を発注しない不公正な慣行が発生している」
「(経営)能力のない財閥2世、3世や一家親戚まで経営に関与する放漫な家族経営風土をなくすことから財閥改革を始めるべき」
「不法(もしくは、合法であるが好ましくない方法)による富の世襲、家族会社にだけ仕事を発注する不法なやり方で富を増殖させることや、(財閥の)無分別な事業拡張は必ず規制されるべき」

「セヌリ党は、経済全体のパイを大きくする成長戦略から、そのパイをどう分けるのか分配を重視する戦略に変えるべきである」

 韓国メディアの報道や与党セヌリ党のチョン院内代表の発言からわかるように、韓国は「公正」「正義」「分配」という言葉に敏感になり始めた。しかし今まで財閥改革を名乗る捜査は、ほとんどが竜頭蛇尾で終わってきた。不正が見つかっても財閥ファミリーのトップが会長の座を追われることはない。有罪になって逮捕されても釈放されるとまた同じことを繰り返す。ロッテグループへの捜査は韓国経済の構造を変える財閥改革のきっかけになるのか。捜査の行方が気になるところだ。