オンラインコミュニティでは、朴大統領の現実を知らなすぎる発言にがっかりして政権交代を望むようになったという書き込みをよく見かけた。史上最悪の青年失業率を記録する中、朴大統領は2015年3月に開いた就職対策懇談会で、「中東に韓国の青年を送り出して就職させましょう。韓国中ががらがらになるほど」と発言した。この発言をめぐり、韓国では同大統領への批判が高まったことがある。

 その他に個人的に注目している点を3つ紹介したい。まず、女性候補の当選が過去最多になったこと。当選者300人のうち、51人が女性である。中でも特に話題となったがソウル市江南の選挙区。24年ぶりに野党候補が当選。しかも女性候補が現役の与党男性議員に勝利した。

選挙違反をスマホアプリで通報

 もう一つ注目しているのは、世論調査と実際の選挙結果が大幅に違っていたことである。地上波テレビ放送や世論調査会社は投票の直前まで、セヌリ党が勝利すると予測していた。世論調査が当たらなかったのは、固定電話に電話をかけて行う昔ながらの調査方法だったからと言われている。全世代をカバーするためには携帯電話やネットによる調査も行う必要がある。

 最後に、不正選挙に対する懸念から、選挙管理委員会による取り締まりや市民団体による投票・開票作業の監視が増えた点も注目したい。選挙管理委員会は、一般市民が投票所や開票作業場を参観するのを認めている。

 4月14日付アジア経済新聞によると、ある市民団体の会員約700人が開票作業をスマートフォンで撮影した。選挙管理委員会の担当者が開票状況をパソコンに入力する場面も全て市民団体が監視するという徹底ぶりだった。

 この市民団体が作ったアプリも活躍した。「市民の目」という名前のアプリをスマホにインストールし、不法選挙運動を見つけたら「通報」ボタンをタッチする。選挙管理委員会が求める形式に沿った通報をすることができる。このアプリは4月8日に効果を発揮した。ソウル市ウンピョン区の事前投票所で、投票済み用紙を入れた箱を封をしないまま運び出そうとするミスがあった。これを市民らが目撃して「市民の目」を使って通報。選挙管理委員会は運び出しをいったんやめ、封をし、改めて運び出した。

 選挙監視に参加した市民団体らは、今回の活動を報告書にまとめて、市民に公開するという。

 この市民団体が作ったスマホ向けWEBサイト「3分選挙」も面白かった。自分の住んでいる地域を検索すると、候補者全員の経歴と公約などが3分でわかるよう見やすくまとめた資料が出てくる。候補者の写真の下には、有権者として意識すべきことも1行ずつ書いてある。例えば、地域や性少数者に対する差別発言の有無や内容などに触れている。

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