3大保守派新聞まで朴大統領に批判的に

 大手新聞の社説の論調を紹介しよう。

 4月14日付朝鮮日報の社説は、「朴槿恵大統領と親朴(与党セヌリ党内の派閥)の傲慢に対する国民的審判が下った。親朴候補らは全国で落選した。与党支持層が多い地域でも票を失った。セヌリ党は選挙前、議席(300席のうち)180席は獲得できると話していた。そのような傲慢が今回の結果(セヌリ党惨敗)を招いた。野党が分裂していなかったらもっと悲惨な結果になっていたかもしれない(選挙区によっては野党がそれぞれ候補を立て票が分散したためセヌリ党候補が当選した)。朴大統領は国民に『国会を変えてほしい、政治を審判してほしい』と訴えたが、自ら審判されてしまった。朴大統領はまず自分自身から変えないといけない」と論評した。

 東亜日報は、「セヌリ党は国政を度外視し、既得権争いに終始した。自分たちのことしか考えなかった。セヌリ党公認候補の選定作業はこれまでで最悪だった。当選できるかどうかを軽視して親朴(朴大統領の側近)忠誠分子を候補にしたため、昔からの支持層が離れた」と朴大統領に批判的だった。

 中央日報の社説は、「(朴大統領が)いくら権力を持とうとも、国民に勝つことはできないことを知るべきである」と論じた。

 4月14日付メディアオヌル(全国言論労働組合連盟が発行する進歩派新聞)は、セヌリ党の問題点と、上記の韓国の3大保守派新聞までが手のひらを返して朴大統領を攻撃している様子を報じた。
「第20回総選挙は朴槿恵大統領の失政に対する審判だった。今後、朴大統領のレームダック化は加速し、セヌリ党内の派閥争い――親朴・真朴・非朴派――が激しくなることが予想される」 「政府・与党セヌリ党を擁護してきた3大保守派新聞が、セヌリ党の惨敗は朴大統領のせいだと主張している」

若者と女性が存在感を増す

 韓国メディアの報道を総合すると、今回の選挙結果の特徴は大きく3つある。(1)国民のセヌリ党離れ、(2)合理的中道を目指す新しい野党の登場、(3)若い層の投票率上昇である。

 セヌリ党支持者が同党内部の揉め事にうんざりして離れていった。セヌリ党議員らは、「親朴」「真朴」「非朴」などの派閥に分かれ、誰が朴槿恵大統領の側近なのかで揉め続けた。

 次に、セヌリ党だけでなく、共に民主党も派閥争いばかりで嫌気がさすという人達が、新しく誕生した「国民の党」に投票した。「合理的中道」を目指す国民の党ができたことでセヌリ党の票が減った。

 さらに、20~30代の投票率が増加したことが野党の躍進に貢献した。

 地上波放送局KBSは4月14日のニュース番組で、「野党を支持する20~40代の投票率が増加。もともと与党を支持するはずだった50代以上は野党に票を入れたか、棄権した」と分析した。

 KBSは、独自に行った出口調査の結果を基に、世代別投票率を試算した。

世代別投票率
世代別投票率
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 複数の韓国メディアによると、就職難に苦しむ若い世代は朴槿恵大統領がこれといった青年雇用対策を出さないことに不満を持つ一方、青年失業問題に関心を持つ共に民主党への支持を高めている。投票率が上がったのは、政権交代を望む意思の表れであると分析した。

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