ソウル市が着手したデジノミクス

 韓国の首都ソウル市は3月から「ソウルデジタル基本計画2020」に着手、2020年までにソウル市のほぼ全域に無料Wi-Fiを普及させる。2016年3月時点で、ソウル市内の5000カ所に無料Wi-Fiスポットがある。これを拡大し、無料Wi-Fiをベースに市民の生活環境を改善するための行政サービスを提供する。無料Wi-Fiスポットは、ビッグデータ分析を行ない、人の流れが多い地域から優先的に整備する。

 具体的には、2020年までに総額4605億ウォン(約460億円)を投資して「ソーシャル特別市」「デジノミクス」「デジタル社会イノベーション」「グローバルデジタルリーダー」の4大戦略を進める。「新しいつながり、いつもと違う経験、グローバルデジタルソウル2020」がキャッチフレーズだ。この計画の中でも最も注目を集めているのは「デジノミクス」である。デジタルとエコノミクスを組み合わせた造語で、デジタル環境を基盤に経済の活性化を図る。

 2017年からは走行中の地下鉄やバスの中を含めて、無料Wi-Fiが使えるようにする。こうすることで、災害情報が提供しやすくなる。無料Wi-Fiにアクセスすると最初にソウル市の告知画面が表示されるように設定し、災害情報や地下鉄の事故・遅延情報を随時提供する。

 無料Wi-Fiのコストはソウル市だけでなく民間企業にも負担してもらう。無料Wi-Fiのセキュリティ強化については中央政府とも協議する。ソウル市はキャリア3社と交渉して電波の干渉により速度が落ちることを防ぐ。

IT人材を育てる

 ソウル市は無料Wi-Fiを普及させることで、都市問題を解決し市民生活を向上させるとともに、IT産業を育成することができるとみている。

 ソウルデジタル財団が中心となり、Fintech(ICTを活用した新しい金融サービス)関連スタートアップを2020年まで30社育成する取り組みを2016年5月から始める。

 2016年9月にはソウル市の南地区にデジタルイノベーションパークという名前のアカデミーをオープンし、IoT分野の専門家33万人を養成する。新しいビジネスを創出するイノベーターの養成を目指す。

 ITベンチャー企業が開発した技術の中から「IoT関連有望技術」を選定し、ソウル市が技術開発費用と営業をサポートする。

センサーが異常を消防に自律的に通報

 無料Wi-FiとIoTを利用することで都市問題を解決し、市民生活を向上させる実証実験が既に始まっている。ソウル市の繁華街、明洞の北側にある北村の住宅街では2015年からゴミの処理やリアルタイム駐車場管理、観光案内・道案内にIoTを使っている。IoTはすべてのモノをインターネットにつなげて、データを計測したり自動制御したりする技術である。

 IoTも無料Wi-Fiを使うことで、より気軽にモノをインターネットにつなげるようになり、より豊富なサービスを展開できる。無料Wi-Fiを使うことで通信費用を節約できるので、一般ユーザーもIoTを利用してみる気になれる。最近の韓国のモバイルデータ通信は従量制課金制で、使い放題の料金プランが少ない。しかも短期間に大量のデータ通信をすると速度制限がかけられてしまう。無料Wi-Fiがいたるところにあれば、負担なくスマートフォンからIoTサービスを利用できる。