開城では低コストで高品質品が製造できた

 開城工業地区の稼働を中断することの問題点は、同地区に入居している韓国企業が受ける被害が少なくないことだ。

 開城工業地区には韓国の製造業が進出している。最も多いのがアパレル工場、その次に多いのは機械金属、電気電子、化学、食品などである。労働者はすべて北朝鮮の人で、給料は1人当たり月160ドル。東南アジアの国々よりも安い賃金で高品質の製品を生産できるとして、開城工業地区は人気が高かった。

 開城工業地区は韓国企業にたくさんの利益をもたらしている。開城工業地区で製造した製品は韓国側に陸送できるので輸送費はあまりかからない。海外の生産拠点の場合、完成品を韓国まで船で運ぶ必要がある。完成品は「北朝鮮産」ではなく「韓国産」として輸出できるので、FTA(自由貿易協定)を締結した国々にも低関税で輸出できる。

 韓国と北朝鮮との関係が悪くなるたびに稼働中断を懸念しなければならないデメリットはあったが、両国の政府は2013年、どんなことがあっても開城工業地区を正常に稼働させ続けると宣言したので、韓国企業はそれを信じてきた。

 開城工業地区企業協会によると、同地区の年間生産額は2015年11月時点で累計約6150億ウォン(約615億円)。北朝鮮人5万4763人、韓国人3000人、合わせて6万人近くが働いていた。再開の見通しが立たない限り、労働者は職を失う。企業も、製品を製造できないので莫大な被害を受ける。同協会は今回の稼働中断がもたらす被害額は2兆ウォン(約2000億円)を超える見込みだと発表した。

 2月14日付のニューシス(インターネット新聞)によると、開城工業地区は、サムスン物産ファッション部門、コーロンFnC、シンウォンなど韓国有名ブランドの製品をOEM製造しているものが多い。ブランド側は、代替工場を探すため海外を回るなど大忙しだという。

 統一部は、「開城工業地区の全面稼働中断は韓国政府が決めたこと。なので、活動ができなくなった企業は政府が支援する。新たな工場用地を探す」としている。

 韓国日報は13日、開城工業地区の今後について3つの可能性を報じた。第1は、韓国の首都圏を攻撃するための軍事地域に逆戻りすること。第2は、残された工場を北朝鮮が自ら稼働させる。もしくは、他の地域に設備を移転して再利用する。第3は、北朝鮮が開城工業地区の工場を第三国に売却するか、稼働を第三国に委託する。

 開城工業地区が軍事地域に戻れば、韓国軍も対策をとらなければならない。韓国軍の負担も増えざるを得ない。

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