大統領官邸は国家安全保障会議を開いて非常勤務体制に入り、「北朝鮮の局地挑発に備えた」。官邸の予想通り、8日の早朝6時55分頃には北朝鮮の警備艇が、北朝鮮と韓国を海上で分かつ北方限界線(NLL、軍事境界線)を超えて韓国の領海を侵犯、韓国軍が警告射撃して追い返すという事件も起きた。韓国メディアは、これは2016年初の北方限界線の越境であり、北朝鮮が韓国軍の警戒態勢を見るためわざと行ったと分析した。

 北朝鮮の動きに関しては、国家安保室が軍と情報当局の情報をとりまとめて朴槿恵大統領に報告している。複数の韓国メディアによると、同大統領は「北朝鮮との対話は無用。まずは、強力な対北朝鮮制裁を採用するよう国連安保理を促す。韓米同盟で実効性のある措置を推進するため駐韓米軍のTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)の配備について公式協議を始める」方針を決めたと言う。

問題は北朝鮮よりも中国

 2月8日付の聯合ニュースによると、与党のセヌリ党は、「北朝鮮がミサイルを発射したのは金大中・廬武鉉政府(進歩派の大統領)の対北援策が誤っていたせいだ(これらの政権が北朝鮮を支援したために、北はミサイルを開発できた)」として、これらの政権を支えた進歩派政党の後継であるドブロ民主党を攻撃した。

 これに対して、ドブロ民主党は次のように切り返した。「北朝鮮のミサイル発射を受けて、待っていましたとばかりに米国とTHAADの配備について公式に協議することにしたのは遺憾である。我々はTHAADを韓半島(朝鮮半島)に配備することに関して世論を聞き、慎重に判断することを強く望んできた」。

 「THAADを配備すれば、北東アジアに新しい緊張を招く。韓米両政府は(THAADは中国に向けたものと懸念する)中国を説得できるのか。THAADの配備に必要なコストは誰が負担するのか。この2点を先に解決すべきである」

 「北朝鮮の核問題を解決するため、朴槿恵大統領が行った外交・安保政策は実効性のあるものだったか振り返ってほしい」

 聯合ニュースはさらに「韓半島(朝鮮半島)に風波が立ち始めた」という見出しで、米国、日本、中国、ロシアの間で揺れる韓国の安保政策を分析した。北朝鮮がミサイルを発射したことや、それに伴う制裁は脇に追いやられ、THAADをめぐり「韓米対中ロ」「韓米日対北中ロ」の対立が生じるのではないかと懸念した。

 2月8日付のハンギョレ新聞も、「韓米日対中ロの対決になってしまうのか」という見出しで、「北朝鮮の暴走を止めるには韓国と中国の対話が必要だ。急いでTHAADを配備すると韓中も対立することになる。韓半島(朝鮮半島)周辺国の利害関係が複雑に絡み、韓半島の情勢は一寸先も見えない大波にのまれてしまったようだ」「北朝鮮に対する韓国政府の超強硬な方針は、中国との関係をこじれさせ、対立の火種になる可能性がある」と分析した。