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女性上司を侮るなかれ

 自分を批判した後輩に対して、「審査員からの引退」という言葉を使いながら、彼女は辛抱を放棄した。
 「引退」と言うが、私には「かかってこんかい」というメッセージが届くのだ。

 女であることに反発された女性上司が「では、私、引退します」と宣言するのは、自らの能力の必要性を組織に問いかける勝負を彼女は取ったのだなぁ、と感じる。
 いいじゃないか。
 引退をチラつかせながら、組織の出方を見たいもんだ。

 闘い方にも“本気”を感じる。つまりは、若手男性ごときに負けないくらいの勝負をして生きてきて勝ってきた女の本気を感じる。

 この勝負、若手芸人はさっそく謝ったらしいが、情けない。吠えたのだ。噛みついたのだ。
 それが本気なら、とことん喧嘩しろよ、と思う。
 すぐ謝るくらいなら、本気の女には不用意に噛みつかないほうがいい。
 なぜなら、負け、が見えているから。喧嘩は勝つ時だけすればいい。

 この勝負、どこからどう見ても、上沼恵美子氏の勝ちなのだ。本気のレベルが生き方も芸もマグナム級に若手男性とは違う。彼女はきっと復帰する。

 正しい審査なんて私は期待していない。そもそも、正しい審査なんて、ない、と思っている。人間社会とはそういう理不尽さと不条理さに満ちている。

 本気と本気がぶつかりあえば、本音と本音が出て、グチャグチャになる。なんと人間臭い。そういうものが私は“好き”だ。
 来年のM-1を今から楽しみにしている。若手芸人さんよ。女性上司をあなどるな、だ。

 最初のご質問にお答えしよう。
  上沼恵美子氏は感情的か? 私の答えはイエス。
 上沼恵美子氏は好き嫌いで審査したか? 私の答えはイエス。
 だが、彼女に反発した芸人よりも、彼女はもっともっと面白い。
 それが私の好き嫌いだ。

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