ある日、私が遙洋子だと気づいた女性がいた。取って返した女性がそのことをお仲間に告げると、まず「騒ぐ人」が現れ、続いて「挑む人」が現れた。
騒ぐタイプは配慮なく騒ぎ、騒げば騒ぐほど、今まで自分が主だと自認していた女性は、陣地争いのライバルが現れたとでも言わんばかりにこちらにちょっかいを出してくる。
こちらはただただゆったり過ごしたいだけなのだが、そういう気配は残念ながら感じ取っていただけない。
サウナの主
このときは唐突に「サウナの入り方」についてまくし立てられた。
公衆浴場で時たま出会う、サウナ牢名主のような女性が、高級フィットネスクラブにもいた。
「ここのサウナはこう入れ」と一方的に命令することで、このサウナの主が誰であるかを示そうと意気込んでいる様子だが、ええと、私、このサウナを我が物にしようという野望など、つゆほどももっていないのですけれど。
私がサウナを出て、身体を拭いている間も、そのご婦人は「2000円安い!」と、バッグを売りにフロアを歩き回っている。
そんな騒々しいフロアの中で、一角だけかろうじて静けさを保っているスペースがあった。海外からの宿泊客が、公共の場らしく静かに語り合い、お行儀よく過ごしている。攻め込むはずの「バッグ売りの熟女」は、どうやら英語は得意ではないらしい。
海外のホテルでもフィットネス施設やサウナを利用してきたが、新聞で顔を隠すわずかな空間にまで顔を突っ込み、相手の品定めをするような行為をされた経験はない。「サウナは私のように入れ」と命令されたことも、バッグを売りつけられそうになったこともない。
大丈夫か、日本の高級フィットネス&サウナ。