残念な免罪符
顔からスタイルから、俺の好みじゃない、だけで女性たちが受けてきたハラスメントなんて、空気のごとくフツーにある。ありすぎて、いちいち録音などはしていない。
美人はセクハラの対象に。ブスは無視され、あなどられ、なじられる。どっちに転んでも得はない。
女性たちはいちいち「ブス」となじられる言葉を録音もせず、刑事告訴もせず、ああ、自分はブスなのだと落ち込み、ならば、と、愛嬌や気づかいでその埋め合わせをしてきた。
ブスはブスなりに工夫してきた。化粧の腕を上げる、笑いの技術を上げる、もそうだ。ブスだけど可愛い、を、手が届く目標として頑張ってきた涙ぐましい女性は少なくないはずだ。
「ブス!」以外にも、ワケわからん罵声は、フツーにある。
ある日、新幹線のグリーン車では、どこかの大きな会社の偉い地位におられるらしい男性が、「コーヒーの底に粉が沈殿しているじゃないか!」と、延々、売り子の女性を怒鳴り続けている光景を見た。
女性はただ、耐えていた。執拗な追及は「このオヤジどうかしてる」と思うに十分なほどだったが、訴追されたりはしない。