ところがあるスタッフ。年配男性だが、こう言った。

 「小さいことをクヨクヨ考えるからそんな病気になるんだよ」

 女性の表情が曇った。私は即座にその男性を叱った。

 「なにも事情を知らないのに、安易にそんなことを口にするもんじゃありません!」

 実際、病気なんて、「なんでこの私が?」という思いを抱えながら、本人が一番悔しいものだ。

 問題は、男性が励ますつもりで、好意でその言葉を吐いたことにある。それがとても相手を苛立たせる言葉になっていると気づかずに、だ。

 この気づかなさが、「鈍いハラスメント」になる。

 その男性スタッフは自分は好意のつもりだったから、なぜ私から叱られるのか理解ができない。

 おそらく「小さいことはあまり気にせず養生してください」と言いたかったのだろう。これが「小さいことクヨクヨするからそんな病気になるんだよ」となると、相手を責めていることになる。家族でも、身内でもない、なにひとつ知らないアカの他人が病人を責めるという構図。「鈍いハラスメント」以外の言葉が見つからない。

話、聞いてます?

 私自身も経験がある。

 昔、体調を崩していた時に、ある男性にテレビ局への移動手段を相談した。その男性には私の体調が悪く、しばしば苦しい状況に陥っていることをその都度、報告していた。

 私が乗るべき新幹線に合わせてタクシーを手配するには、朝7時の予約が必要だった。しかし、この時間、実はタクシーが少ない。深夜のタクシーは会社に戻り、早朝のタクシーはこれから出るところ。タクシーの空白時間なのだ。

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