私自身だって、一人で豚カツは作れても、おでんとみそ汁は作らない。豚カツ+とろろ、か、おでん+とろろ、くらいで上出来だ。すでに私も偏っている。

 友達も言う。

 「そりゃ、豚カツの日に同時におでんは作らんわ」

 ならば皆、ここに入れば問題は解決するじゃないか・・・。

リタイア不要の元気さが

 だが、難点がある。費用はもちろんだが、仕事場に遠い、ということ。多くの場合、自立型施設は広大な土地を必要とする。周りが山に囲まれての立地は、自ずと街からは遠くなる。そこで栄養を十分に補充し、トレーナー付きで筋力をつけ、喫茶室で会話を楽しみ、そういった理想的な暮らしが出来ても、そこから職場が遠すぎる・・・。

 その施設の元気すぎる高齢者は、食べた。鍛えた。そして・・・趣味、だ。そこに仕事はない。リタイアした方々なわけだから。

 では高齢になっても仕事がある人はどうか。仕事はあるが、食事は手抜きになりがちで、見守りトレーナーも日常生活にはいない。高齢者ウェルカムの喫茶店は数を減らし、互いに干渉しないカフェが街中に並ぶばかりだ。

 ・・・惜しい・・・。

 施設に入り、元気になった人には仕事がない。仕事がある高齢者はその日常のあまりのQOLの低さに、老人ホームに入る時にはすでに自立支援型ではなく、介護型に直行、となっては笑いごとでは済まない。

 倒れるまで仕事はできるだろうが、健康寿命は短くなる。

 健康寿命を延ばした高齢者には、仕事がない。

 この、両方の足りなさをいったいどうつなげればいいのか。

 私がこの秋に、遅すぎる夏休みで長期滞在型のリゾートホテルに連泊したときのことを思い出した。

 南国で太陽を浴び、室内プール、フィットネス、温泉、カラオケ完備。食事はバイキング形式。これで私は8日間を過ごせると考えた。が、失敗した。

 食事のおいしくなさに、2日目には食欲がなくなった。レストランで外食しようにも、郊外型を選んだため施設から遠すぎる。プールは一人占めできる優雅さだったが、トレーナーがいるわけでもなく、フィットネスも安全な器具ばかりで、つまりはトレーナーを置かずとも怪我しない程度の器具が並んでいた。

 老人ホームより豪華さを期待されるリゾートホテルで、この程度のクオリティだった。

 そして、私はまったくそこが合わなかった。その一番大きな理由が食事だった。

 みるみる衰弱していくのが自分で分かった。

次ページ 入るには…