おでんもいい

 レモンは絞った手がビチャビチャになるほどジューシーだ。薄いスライスだと数滴絞りだすのが関の山。また、自分でレモンを買っても種ばかりのパサパサしたのを買ってしまったりもする。

 そしておでん。辛くもなく、甘すぎることもなく。味噌汁も同様。私は食堂で味噌汁を残すことが少なくない。たかが味噌汁、という手抜きをしたものは、美味しいと思わないからだ。

 だが、飲みほした。ここでは、味噌汁一杯も料理としてのこだわりを感じるものだったからだ。

 そして・・・完食した。

 施設の人が言う。

 「ここに入所するまでは、高齢者は、特に単身男性は食事の質が落ちています。外食したり弁当を買ってきたりしてそれなりに気をつけていても、やがて飽きる。自炊といってもたいしておかずを作れない。やがて栄養が偏り弱ってきます。弱ってから介護施設に入るのではなく、いかに健康寿命を延ばし、介護期を短期間にするか。そこに、この自立支援型の施設の意味があります。だから、ここに入所してから元気になる高齢者が多いのです」

 私の知人で、趣味が料理、という主婦がいたが、70代になって、体調を壊したら今は「毎日、缶詰ばかり食べています。作る気にもなれないし、作ったところで食欲もない」という。

 友達の母親は80代。かつては30分で5品のおかずを作れるエネルギッシュな女性が、今はもう作れない。娘たちが実家に帰ると張り切って作るが、品数は限られる。

 高齢のシングル女性タレントたちは、夜な夜な、「食事に行こう」と後輩タレントを誘う。

 作れない。作るのしんどい。外食で栄養を取らねば。一人じゃ行きにくい。

 そういった事情を高齢者の皆が抱えながら仕事しているのだった。

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