私を育ててくれた諸先輩方がいる。もう引退したり他界したりで、ひそかに寂しい気分で仕事を続けてきた。が、ここにまだ、あの当時の武将たちと似たオーラを放つ青年がいるではないか。

 局入りするなり戦況を、つまり、数字をスタッフに聞いた。他局と格闘中だという。

 私の頭の中はそれを聞くなり、メイクもヘアも、微妙に違う肩書も、漢字を間違えた名前表記もどうでもよくなった。

 格闘中か。なら、戦おう…。

久々のオーラ

 「誰にも挨拶しない」という私に、事務所の人間が、「せめて坂上忍さんにだけは」というので、楽屋に行った。扉を開けると、そこに、昭和の時代の芸能界の視聴率をけん引してきた先輩たちがかつて持っていた独特のオーラを放つ青年がいた。

 タバコを吸いながらモクモクと漂う煙の中で(今の時代、タバコて!)真剣な眼差しで台本を読む。そこに、いまからの合戦の戦略を練る武将の姿が重なった。その真剣さは、いったん始まるとバラエティとしての笑いを提供する光景からは、視聴者は想像しにくいだろう。

 真剣ながらに、あぐらをかく姿勢から、正座の姿勢へと変え、最短で最低限の礼儀の挨拶を彼は済ませた。

 彼も同様なのかもしれない。挨拶などどうでもよい。来るというなら受け入れるが、今の自分はそんなことよりこれからの戦だ、というのが、台本を食い入るように読み込む険しい表情からうかがえた。

 同時に、"ご挨拶"ということが芸能界のイロハのイであることなど子役の時代から叩き込まれてもきた青年であろう。だから出た"正座"なのだとうかがえる。