ぬるくて、ぬるっと

 温泉。床がとても滑る。お湯の成分のせいだろうか。

 足元に気をつけながら湯船へ。

 …ぬるい。

 引き込んだ湯が流れ込むところは比較的温度が高いので、自然と人がそこに向かう。広い湯船なのに、人が一カ所に集まってしまう。

 ぬるい温泉で油断して風邪、という間抜けな展開を避けるべく、慌ててサウナに入る。が、サウナもまた微妙に温度が低い…。

 「はあああ、ほっこりする」という、温泉ならではの幸せな気分はどこへ行ったのか。

 …と落胆している場合ではない。床がぬるっと滑るのだ。「ここで転んだら怪我してしまう。気を付けなきゃ」という警戒心が湧き上がり、体の芯に力が入る。一歩一歩に気が抜けない。

 濡れた足で滑らないように用意されているバスマットは、ビニール製で表面がトゲ状になっていて、踏むと足の裏に痛みを感じる。私の足が特別にデリケートというわけではないと思うが、とにかくこちらも体が自然と警戒してしまう。二日目からは、いかにバスマットを踏まないで、その向こうのよく滑る床に着地するかが私の努力目標になった。もう、よくわからない。

 高齢の宿泊客がよろよろと歩いているのを見ると、こちらも力が入ってしまう。子どもが走って怪我でもしないだろうかとふと心配になり、どうにもくつろげない。

 フィットネス施設。一見それらしい設えだが、ランニングマシンはなく、上腕筋を鍛える器具などもない。細かい定期点検が必要とされず、扱いが簡単な種類のものだけが並べられている。

 温水プール。一人占め状態で最初は喜んだが、はて経営的にはこれで大丈夫なのか。余計なお世話ながらいろいろ考えてしまった。