「講演は一人だし、相方もいないので、笑いは“取れない”んです」
 「とれない? とらなきゃだめでしょ。依頼者は“芸人さん”を招いているのに。」  もう一人の芸人さんがかばった。
 「そりゃ、相方いなかったら笑いは取れませんて。姉さん」

 そうか。私を姉さんと呼んでくれるのなら、この待ち時間に教えてあげましょう、と喋った。

 「何を言うてんねん。芸人でもない私でも、講演に呼ばれたらお客さんに笑ってもらい、泣いてもらい、本を買ってもらい、依頼者が1時間半というなら1時間半をお客さんに楽しかったと言ってもらえるよう工夫する。これが講演や。笑いとらんでいい? 時間を短くしてもらう? 一人やから無理? 何を言うてんねん。独身か?」
 「いえ。僕たち二人とも結婚して子供もいます」
 「なら、講演でも何でも笑いをとって稼がなあかんやん」

 驚愕その2。売れる前から結婚し、子供までいる。そのくせ仕事に貪欲さや意欲のようなものは会話を見る限り感じない。なぜ彼らは焦らないのか……。

姉さん、どこで覚えましたん!?

 講演をしていないほうの芸人さんに聞いた。

 「あなたは仕事がない時、何をしているの?」
 「僕はPTAの会長を2年間もやりました。すっかり疲れました。モンスターペアレントいました」
 「なら、それを書籍にするとか、ネタにするとか、いろいろ稼ぐ方法あるでしょうに」

 マッチョな芸人さんが言った。

 「本は書いても、儲かりませんでしょ」
 「あほやな。本で直接利益に繋がらなくても、本をきっかけに2次3次に展開できるでしょうが」

 今度は青年たちが驚愕して私を見た。

 「姉さん、カネの稼ぎ方、どこで覚えましたん!?」

 そしてこうも聞いた。

 「講演で笑いをとるって……。どこで覚えましたん!?」