人生には「柔軟性」とか「対応力」が必要で、それをうまく持てない不器用な人間は、何かと苦労が絶えない。
しかし、何でも仕方がないと受け流すばかりでは、血がたぎるような体験もできまい。
全力を注げ
たとえ不器用でも、最大限の情熱を注いで、人生で一度あるかないかの熱いヒット作に出合えたならば、それはそれで、素晴らしいことじゃないか。
見事に燃え、熱の強さがゆえに後年の人生に対応できず病に散った。でも、その熱さがたくさんの仕事仲間たちの楽しい思い出となって今も生きている。
何事もつつがなく、もよいけれど、振り返って何もないよりも、たとえうまくいかなくても、数十年後に仲間たちが集まって宝物のような楽しい思い出を語り合ってくれるなら、それはそれで素晴らしいじゃないか。
葬儀の後、白髪の女性は、彼女の息子を称えた私に小声で訊ねた。
「息子はそんなに立派にやれていたのでしょうか」
私は大きく頷いた。現場で熱く輝いていた彼を知る者の一人として。

『私はこうしてストーカーに殺されずにすんだ』